担うべきは調整--デジタル化が迫るIT部門の在り方、“バイモーダル”が重要

三浦優子 2015年03月10日 10時46分

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 ガートナー ジャパンは3月9~10日、「ガートナー エンタープライズ・アプリケーション&アーキテクチャ サミット2015」を開催。初日の基調講演にGartnerリサーチバイスプレジデントであるMark Driver氏が登壇し、「現状でもIT部門管轄外で発生するIT投資、パワーが38%に及ぶというデータが出ており、2017年には50%へと拡大するとみられている。IT部門がコントロールできない事案が増え、それが指数関数的に拡大することになる。もう過去に戻ってこの流れが変わることはあり得ない。IT部門の役割も、従来の管理から(ITが及ぼす変化に対する)調整と促進へと変化している」と世界中に起こるデジタル化でIT部門の役割が大きく変化していると指摘した。

 そして、「IT部門には『堅牢性』と『流動性』という相反する要素が求められる。相反する要素をあわせもった“バイモーダルIT”を目指すべし」と新しいスタイルのIT部門を目指すべきだと提言した。

デジタル化はリアルワールドにも多くの変化

 Driver氏は、「今回のサミットの全セッションには、革新・変革・加速という3つのコンセプトがある。どのセッションを聞いている時にも、この3つのコンセプトを頭に置いて聞いてほしい」と話してから自身の講演をスタートした。

 まず、革新として「ITで革新を進めるというのは決して珍しいことではない。しかし、時期によって革新の中身が大きく変化している」ことを説明した。

Mark Driver氏
Gartner リサーチ バイスプレジデント Mark Driver氏

 「25年前であれば、ITの革新は効率を上げることだけに集中していた。すべてのコンピューティングリソースは効率を上げるために使われていた。それが25年前以降は、コンピューティングは分散型となり、インターネットによってコンピュータは効率化だけでなく、ビジネスプロセス革新にも利用されるようになった。例えばインターネットを使ってモノを売るという事例がその典型だ」

 この革新の最新が現在起こっているデジタル化となるが、「ネットでモノを売るという変化は、技術を活用しているに過ぎなかった。それに対し、現在起こっているデジタル化による変化は、全てがアナログからデジタルへと変わってきている。音楽を例に取るとわかりやすいが、単にネットを使ってアナログのCDを販売するのではなく、販売する音楽そのものがデジタル化されたことで、従来とは全く異なる大きな新しい世界が生まれている。デジタル化はリアルワールドにも多くの変化を及ぼすものとなっている」と説明し、こう続けた。

 「これは企業間取引の製造業の世界でも起こっている。玩具であれ、航空機であれ、製造業は製品開発にデジタルデータを活用し、デジタル上でシミュレーションしている。トラックで配送する際にもセンサや電子機器が活用され、そこから発生する情報でビジネスが進展している。デジタル化でたくさんの新しいことが生まれている」と、これまでにない変化を及ぼす革新がデジタル化だと説明した。

 今後、“モノのインターネット(Internet of Things:IoT)”化の進展によって「現行では6500億のデバイスが接続され、その波は加速して何兆というレベルまで、インターネットに接続されたデバイスの数は増えていくだろう。それに伴って、デジタルファーストという戦略は必須なものになる」とデジタル化が不可欠になるとした。

 さらに、「ユーザーがモバイルデバイスを持って移動し、その中でショッピングを楽しむことでデスクトップPCの前で行っていた時の何倍もの情報が生まれる。それをリアルタイムでビッグデータとして分析することも可能となる。昔はバッチ処理が当たり前だったものが、クラウド、インメモリキャッシングで大きく変わる。誰とどう結びつくのかが明らかになることで、新しいビジネスチャンスが生まれる」という変化を紹介した。

 ただし、こうした新しいITの世界はIT部門管轄というよりは事業部門発で生まれることが多い。「事業部門はIT部門の助けを借りることなく、SaaSを活用することで目的を実現してしまう。これまでとは異なるIT投資となり、IT部門で発生するIT投資が増えてくる。現行でも38%がIT部門外から発生しており、2017年には50%がIT部門外から発生するという推測となっている」

 IT部門がコントロールできない事例が増えてくることになるが、「この傾向はPCが誕生した時から発生していたものだ。その傾向が指数関数的に増えている。もはや過去に戻って、IT部門が全てをコントロールする時代が起こるとは考えにくい」とIT部門が全権管理する時代は終わりつつあると断言した。

 では、IT部門はどんな役割を担うべきなのか。それに対しDriver氏は、「コントロール(管理)ではなく、コーディネーション(調整)。そして変化を促進していくことがIT部門の役割だ」と答えている。

 また、IT部門には「堅牢性」と「流動性」という相反する要素が必要になるとも指摘。堅牢性とはセキュリティなど確実に、安全、安心にITを活用していくための姿勢であり、流動性とは革新、アジリティといったものを取り入れた新しい技術を取り入れる姿勢を指す。

ZDNet Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

この記事を読んだ方に

関連ホワイトペーパー

SpecialPR

連載

CIO
トランザクションの今昔物語
エリック松永のデジタルIQ道場
研究現場から見たAI
Fintechの正体
米ZDNet編集長Larryの独り言
大木豊成「仕事で使うアップルのトリセツ」
山本雅史「ハードから読み解くITトレンド放談」
田中克己「2020年のIT企業」
松岡功「一言もの申す」
松岡功「今週の明言」
内山悟志「IT部門はどこに向かうのか」
林 雅之「デジタル未来からの手紙」
谷川耕一「エンプラITならこれは知っとけ」
大河原克行「エンプラ徒然」
内製化とユーザー体験の関係
「プロジェクトマネジメント」の解き方
ITは「ひみつ道具」の夢を見る
セキュリティ
「企業セキュリティの歩き方」
「サイバーセキュリティ未来考」
「ネットワークセキュリティの要諦」
「セキュリティの論点」
スペシャル
課題解決のためのUI/UX
誰もが開発者になる時代 ~業務システム開発の現場を行く~
「Windows 10」法人導入の手引き
ソフトウェア開発パラダイムの進化
エンタープライズトレンド
10の事情
座談会@ZDNet
Dr.津田のクラウドトップガン対談
展望2017
Gartner Symposium
IBM World of Watson
de:code
Sapphire Now
VMworld
Microsoft WPC
Microsoft Connect()
HPE Discover
Oracle OpenWorld
Dell EMC World
AWS re:Invent
AWS Summit
PTC LiveWorx
より賢く活用するためのOSS最新動向
古賀政純「Dockerがもたらすビジネス変革」
中国ビジネス四方山話
ベトナムでビジネス
米株式動向
日本株展望
企業決算