デジタル化が変える購買行動--アクセンチュアが消費財メーカーに訴える経営モデルの変革

田中好伸 (編集部) Emi KAMINO

2013-08-13 08:00

 ビジネスとITは一体不可分であり、ITを活用することで経営そのものも効率化できる。だが、ビジネスを日本国内だけで展開するのとアジア地域で展開するのでは、システムの性格も変わってくるし、経営の仕組みも変わらざるを得ない。

 まして、グローバル全体でビジネスを展開するようになると、システムと経営の仕組みは大きく変わらざるを得ない。従来のような方法論では、グローバルでの時間の早さについて行けないからだ。


 例えば、2008年9月のリーマンショック直後には「需要が蒸発した」とも言われるほどの激しい変化が瞬く間にグローバルに広がった。極端な事例かもしれないが、2012年の尖閣諸島国有化後の中国市場では、日本製品への需要が急速に減退したことは記憶に新しいだろう。リーマンショック後のグローバル市場は“新たな常態(New Normal)”とも表現されるが、象徴的に言えることはつまり“ボラティリティ(変動)リスク”が増大しているということだ。

 ビジネスがグローバルに拡大していることを受けて、ビジネスを支えるシステムと経営の仕組みをどのように変えていけばいいのだろうか。早くから世界に打って出た自動車業界は成功しているように見えるが、実際には、一筋縄にうまくいっているわけではない。自動車業界各社はこれまで、かなりの苦労を強いられてきており、そして今、グローバル化によるボラティリティリスクとどのように付き合うべきか苦心しているところだ。

消費財ならではのオペレーティングモデル

 少子高齢化という大きな現実を前に、市場そのものの成熟化で成長率の鈍化を受けて、化粧品やトイレタリー、飲料、食品などの一般消費財を提供する日本企業も、この数年で海外市場に進出し始めている。だが、多くの日本の消費財メーカーは、グローバル市場展開に手をつけ始めたばかりだ。

 そうした状況をとらえて、Accentureは6月に消費財メーカーを対象に、グローバル市場で成長を加速させるための“オペレーティングモデル”を発表した。このオペレーティングモデルは、消費財メーカーが変化する市場に対して、統合基幹業務システム(ERP)などのバックエンドのシステムも含んだ、どのような経営の仕組みを構築していけばいいのかをまとめたものだ。このオペレーティングモデルは以下のタイプで構成される。

  • ローカル=業務や組織が国別の拠点でそれぞれ運営されている
  • リージョナル=地域ごとに“ハブ”があり、サプライチェーンやバックオフィスの機能は集約化されている
  • グローバル=グローバル規模での事業モデルと事業機能を構築し、ブランドをグローバルで展開する
  • スーパーグローバル/スーパーローカル=グローバルレベルで徹底した規模のメリットを追求するとともに、多様化する市場、顧客ニーズに適切に対応することができる

 ここまでが、グローバルオペレーティングモデルとしてこれまでも紹介されてきた。この中では、「スーパーグローバル/スーパーローカル」が最上位モデルであり、標準化されたグローバルオペレーションとローカルでの柔軟な業務を両立させることで、グローバル競争での優位性を確保すべきであると提唱されている。

 今回はさらに、デジタル化が進む中で今後進化していくオペレーティングモデルとして以下の2つのモデルが紹介された。

  • デジタルでの中抜き(Digital Disintermediation)=デジタル化によって、サプライチェーン全体でネットワーク化された事業モデルを構築していく
  • 液状化(Fluid)=グローバルを単一の市場としてとらえる。地域という基本単位ではなく、事業を拡大する

 このオペレーティングモデルは日本で初めて発表された。それは、日本の消費財メーカーにこそ、今回のオペレーティングモデルを活用してほしいという同社の狙いがあるからだろう。

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