キヤノンITソリューションズ(CITS)は10月13日、経営方針説明会を開催し、2025年までに事業モデルを変革する長期構想「VISION2025」と戦略を表明した。共創型ビジネスやサービスビジネスの比重を高める。
会の冒頭では、代表取締役社長の金澤明氏が、まずVISION2025の背景を説明した。同社は住金システム開発が母体で、2003年にキヤノン販売(現キヤノンマーケティングジャパン)グループ入りし、2008年のアルゴ21と合併で現社名に。その後は2009年にキヤノンネットワークコミュニケーションズ、2017年にキヤノンソフトウェアを統合している。
「VISION2025」を説明したキヤノンITソリューションズ 代表取締役社長の金澤明氏(右)と上席執行役員 デジタルイノベーション事業部門担当の村松昇氏
金澤氏は、2008年の金融危機(リーマンショック)による大企業向けの受託開発ビジネスの悪化が転換点だったとする。以降も人口減少に伴うエンジニア人材の困難化と「人月ビジネス」の限界、コロナ禍や企業顧客のデジタルトランスフォーメーション(DX)志向などで、同社事業の構造変革がより急務となった。この間には、ITビジネスの比重を高めるキヤノンマーケティングジャパンのグループ再編もあり、2020年1月にVISION2025を打ち出した。
同氏は、製造業(住友金属)のIT部門という伝統と各種統合を経て生まれた多様性や個性がCITSの中核にあると位置付け、VISION2025の方向性として「お客さまに寄り添う」(製造業の起源)、「先進技術への挑戦」(独立系SIerの文化)、「最後までやり切る胆力」(キヤノングループの文化)を表明。「共想共創カンパニー」をスローガンに掲げ、2025年までに、顧客と協調して事業開発や事業改革に取り組む「ビジネス共創モデル」、業種・業界横断を特徴とする「サービスモデル」、従来の受託開発からシステム最適化支援を軸に移す「システムインテグレーションモデル」の3つを中心とする事業構造に移行するとしている。
「VISION2025」の概要
これらのモデルでは、注力領域に「顧客企業のデジタル化」「データ活用」「技術革新」を設定。顧客企業のデジタル化では、例えば、サプライチェーン管理を高度化するため、ソフトウェアパッケージや自社で研究開発を進めてきた数理最適化技術を用いる配送最適化ソリューションなどを展開する。データ活用では、大学向けの経営改革支援のデータ基盤「in Campus IR」の投入、技術革新では、ローコード開発基盤「WebPerformer」のクラウドサービス化などを例に挙げた。
3つのビジネスモデルを推進する上で人材面の変革も必要とする。ビジネス共創モデルでは、多様な業界のビジネスに精通する人材「ビジネスモデルスペシャリスト」を定義、育成し、2021年比で2025年までに人員を5倍に増やす。サービスモデルでは、法規制対応や原価の可視化など企業に共通するニーズに対応するサービス開発人材などを1.5倍に、システムインテグレーションモデルでは既存リソースの高度化などで1.1倍にそれぞれ人員を増やすとした。
「VISION2025」での人材投資の方向性と目標
金澤氏はVISION2025の推進で、顧客とは「信頼関係」の強化、従業員とは会社との「絆」の強化が不可欠として「エンゲージメント経営」を実践するとも表明。また、エコシステムパートナーも拡充するとした。これら施策により、2021年比で2025年の全社売上高を1.5倍(2020年12月期単体売上高は871億600万円)、サービスモデルの売り上げを2倍とする目標を明らかにした。
ビジネス共創モデルについては上席執行役員 デジタルイノベーション事業部門担当の村松昇氏も説明を行い、顧客と「言いたいことが言い合える」信頼関係の醸成、不明瞭になりがちというDXの目的の明確化支援、業績を拡大する「攻めのDX」の重視――で顧客に伴走するビジネスを展開するとした。
「(製造業が起源のITベンダーとして)System of Record(記録重視のITシステム)が扱え、System of Engagement(関係性重視のITシステム)もできるのがキヤノンITソリューションズの強み」(村松氏)と述べ、紙文書の内容を電子データ化するといった身近な業務課題の改善から、テクノロジーを活用する新規事業開発まで顧客と強調して取り組んでいると説明した。
拡大を目指す「ビジネス共創モデル」の方向性