NECは12月10日、ESG(Environment:環境、Social:社会、Governance:企業統治)に関する活動の説明会を開催した。説明会では、非財務の取り組みが与える財務への影響や、サプライチェーン全体における二酸化炭素(CO2)排出量を実質ゼロにする活動について語られた。
2025年を目標年次とするNECの中期経営計画では「戦略」と「文化」を一体化し、「NECは、安全・安心・公平・効率という社会価値を創造し、誰もが人間性を十分に発揮できる持続可能な社会の実現を目指します」という同社のPurpose(存在意義)に関する取り組みを行う。その中で、最高財務責任者(CFO)の役割は、「長期利益の最大化」「短期利益の最適化」に向けた財務戦略と、サステナブルな成長に向けた非財務基盤の強化を共に推進することだという。
説明会に登壇した執行役員常務 兼 CFOの藤川修氏は「急速に変化し、将来が見通しにくいVUCA(Volatility:変動性、Uncertainty:不確実性、Complexity:複雑性、Ambiguity:曖昧性)の時代において、『結果の指標である財務』と『結果を生み出す非財務』の取り組みを統合して行うことが、サステナブルな成長を維持し、変化への対応力向上につながる」と語った。
NECは「Dow Jones Sustainability Indices」など、主要なESG指標に組み入れられているというが、ESG指標における現状の評価視点はリスクマネジメント関連が多く、ESGやサステナビリティーを自社の成長につなげている企業に対しては、評価に課題があるとしている。非財務の取り組みが自社の財務パフォーマンスに与える影響を計ることもできないという。
そこで同社は2021年度から、非財務の取り組みが与える財務への影響を可視化する活動を行っており、分析結果を基に非財務の取り組みの改善・強化を図っている。グループ会社であるアビームコンサルティングと連携し、NECグループ内における273個の非財務指標を分析したところ、そのうち25個の非財務指標が財務指標に貢献していると分かった。25個の半数以上である15個は、人的資本に関する指標が占めていた(図1)。
例えば、部長職以上の女性管理職数を1%増やすと、7年後の財務指標が3.3%向上すると明らかになった。また、従業員一人当たりの研修日数を1%増やすと、5年後の財務指標が7.24%向上するという。
※クリックすると拡大画像が見られます
NECは、自社の因果分析ソリューション「Causal Analysis」を活用して、人的資本を分析している。同社が従業員に対し毎年実施しているエンゲージメント調査の改善レポートを参照したところ、従業員エンゲージメントの向上には部下の「個人裁量権」向上が必要だと分かった。
個人裁量権の背後にある要因を明らかにするため、部下が上司に求める行動要素を因果分析した結果、個人裁量権に影響を与えているのが「心理的安全性」で、心理的安全性に影響を与えているのが「共感発信力」であると判明した(図2)。共感発信力とは、部下にチームの方向性を適切に伝え、ポジティブな成長思考で接することができることを指す。今後はこの結果を上司の共感発信力を向上させる施策に生かし、従業員エンゲージメント向上に向けた施策の拡充と検証を進める。
NECは今後も非財務の取り組みが与える中長期の財務パフォーマンスへの影響を分析し、非財務の取り組みに適切な投資をする。これにより、中長期にレジリエント(マイナスな出来事も反発力に変えて成長する)な財務基盤を構築し、サステナブルな成長を推進する。
※クリックすると拡大画像が見られます