クラウドコンピューティングのトレンド--調査結果から探る次なる進化

Charles McLellan (ZDNET.com) 翻訳校正: 川村インターナショナル

2021-12-17 07:30

 「クラウド戦略がないビジネス戦略などあり得ない」。GartnerのバイスプレジデントのMilind Govekar氏は、同社が11月に開催した「IT Symposium/Xpo 2021」を前にこう語った。「パブリッククラウドへの関心と採用は弱まることなく続いている。組織が新しいワークロードのオンボーディングにおいて『クラウドファースト』のポリシーを追求しているからだ」(Govekar氏)

 Gartnerの推定では、85%以上の組織が2025年までにクラウドファーストの原則を採用し、新しいワークロードの95%以上がクラウドネイティブのプラットフォームに展開されるという(2021年の30%から増加)。同社は、今後数年間で、「関連するエンタープライズIT市場」のクラウドの売上高が、非クラウドの売上高を上回ると予測している。「クラウド以外のものはすべて、レガシーとみなされるようになるだろう」とGovekar氏は指摘する。

 これらのクラウドをビジネスIT分野全体に吹き込んでいる風とは、どのようなものなのだろうか。Gartnerは8月、パブリッククラウドサービスへの支出が2022年に4800億ドルを超えるとの予測を発表し、その要因として以下の4つのトレンドを挙げた

クラウドの遍在性:「ハイブリッド、マルチクラウド、エッジ環境が成長し、新しい分散型クラウドモデルの下地を作っている」

地域的なクラウドエコシステム:促進要因は「地政学的な規制の断片化、保護主義、業界コンプライアンス」

持続可能性と「カーボンインテリジェント」クラウド:「クラウドプロバイダーは、カーボンニュートラルに関して意欲的な企業目標を設けることで、持続可能性への関心の高まりに対応している」

クラウドインフラストラクチャー/プラットフォームサービス(CIPS)プロバイダーの自動化されたプログラム可能なインフラストラクチャー:「Gartnerは、ハイパースケールCIPSプロバイダーによる、全面的に管理された人工知能(AI)/機械学習(ML)対応クラウドサービスが広く採用されると予測している」

提供:Data: Gartner / Chart: ZDNet
提供:Data: Gartner / Chart: ZDNet

 Gartnerの予測では、2022年のパブリッククラウドサービスへの総支出額は前年比21.7%増の4820億ドルに達するという。急成長が見込まれる分野は、インフラストラクチャーサービス(IaaS、32.9%増の1220億ドル)、サービスとしてのデスクトップ(DaaS、30.4%増の27億ドル)、アプリケーションインフラストラクチャーサービス(PaaS、25.8%増の1010億ドル)だ。

 したがって、クラウドは複数の面で成長し、進化している。クラウド市場の動向を追う本記事では、最近の調査やアナリストの研究を検証し、市場の次なる行き先を明らかにする。

IBM:クラウドの次なる飛躍

 IBM Institute for Business Value(IBV)はOxford Economicsと共同で、29の業界セクターと44カ国の企業の経営幹部7164人を対象とする調査を実施し、2021年10月のレポート「Cloud's next leap: How to create transformational business value」でその結果を発表した。調査対象の企業の平均売上高は8億500万ドルだった。

 同レポートの主な目的は、クラウドを利用したデジタルトランスフォーメーションの現状を調査することだった。このために、著者らは、クラウド採用において「次第に力強さを増す」以下の4つの段階を特定した。

 Cloud v1:インフラストラクチャーをサービスとして購入し、実際に消費したサービスの分だけ料金を支払う。

 Cloud v2:ハイパースケールクラウドプロバイダーのクラウドサービスをクレジットカードで購入する。

 Cloud v3:アプリケーション、コンピューティング、ネットワーキングのインフラストラクチャーのデフォルトモデルとしてクラウドに移行する現在の段階。

 Cloud v4:ビジネストランスフォーメーションのデフォルトの運用インフラストラクチャーとなる新たな段階。

 IBMは、Geoffrey A Moore氏の古典技術採用モデルに照らして考えると、Cloud v1は「従来のオンプレミスデータセンターに伴う高コストで面倒なプロセスに対するソリューションとして」、すでにアーリーアダプターとアーリーマジョリティーの間の「キャズムを乗り越えた」と指摘した。IBMはCloud v2も同様の道筋をたどったと主張しており、その背景として、さまざまな部門がクラウドサービスを直接購入してソフトウェア開発の実験を行ったことが挙げられるが、この「シャドーIT」によって「障害やセキュリティ侵害の発生率が高まる」というマイナス面があったという。

 Cloud v3は、「既存のワークロードのクラウド移行、アプリケーションのモダナイゼーション、そしてクラウドサービスプロバイダーとさまざまなスタイルのクラウドコンピューティングで構成されるクラウド『エステート』の構築」に関連するもので、現在はアーリーマジョリティー状態に向かっているところだと、IBMのレポートに記されている。しかし、この複雑な組み合わせは、アプリのモダナイゼーション、コンテナーとマイクロサービス、デザイン思考、アジャイル、DevSecOpsが含まれており、雑然とした状態になって高コスト化する可能性がある。IBMは次のように警告した。「ワークロードの移行計画がクラウド戦略と混同されることがあり、デジタルトランスフォーメーションイニシアチブはクラウドとの明確な統合がなされないまま進むことが多い。また、クラウド技術の導入に際して、その利点を活用するために必要なクラウド運用への変更が行われないことがある」

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