ハイブリッドクラウドソリューションをサブスクリプションモデルで提供するビジネスが注目されるようになってきた。この動きは何を意味するのか。どうやら、ビジネスエコシステムの熾烈な主導権争いが繰り広げられそうだ。
ハードウェアベンダーがクラウドサービスと同様のビジネスモデルに
オンプレミスのシステムとクラウドサービスを連携させて最適なIT利用環境を構築するハイブリッドクラウドソリューション。これを積極的に推進するHewlett Packard Enterprise(以下、HPE)やDell Technologies(以下、Dell)が、そのビジネスモデルとして従量課金や定額課金などのサブスクリプションモデルを採用したことで、この動きがにわかに注目されるようになってきた。
富士通やNEC、日立製作所といった日本の大手ITベンダーも同じ動きを見せている。サーバーやストレージなどのハードウェアベンダーがクラウドサービスと同様のビジネスモデルにすべく、これまでの売り切りからサブスクに転換したことがポイントだ。
HPEとDellの取り組みを少し紹介しておこう。
HPEが提供するサブスク型サービスの名称は、「HPE GreenLake」(以下、 GreenLake)だ。同社は2019年6月に「2022年までに全てのポートフォリオを“as a service”として提供可能にする」ことを掲げ、ビジネスモデルの転換を図っている。その全体像となる「企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を支援するためのプラットフォーム」を描いたのが図1だ。
図1:HPEが提供するDX支援プラットフォーム(出典:日本ヒューレット・パッカード)
図1には、横軸に「エッジからクラウドまでの横断的な製品ポートフォリオ」、縦軸に「あらゆる環境をクラウドに変革」する要素が描かれている。その全てをas a serviceで提供するサービスがGreenLakeである。
GreenLakeの狙いについて、HPE日本法人の幹部がかつての記者説明会で次のように語っている。
「コストの最適化やスピード経営の観点からパブリッククラウドサービスが普及しつつあるが、一方で企業にとって貴重なデータの保護やセキュリティリスクからオンプレミスも利用され続けるとHPEでは見ている。そのため、オンプレミスを従量課金で提供するほうがパブリッククラウドよりも市場としての成長性が高いと予測している。GreenLakeはパブリッククラウドも含めたハイブリッドクラウド環境に柔軟に対応しており、全ての利用形態にクラウドエクスペリエンスを提供できると考えている」
一方、Dellが提供するサブスク型サービスの名称は、「APEX(エーペックス)」だ。同社はこのサービスを2020年10月に発表し、「Everything as a service and subscription」と銘打って順次、展開している。Dell日本法人の首脳は先頃の自社イベントで次のように語っている。
「APEXの目的は、パブリッククラウドとプライベートクラウドのベストオブブリードとして活用されるサービス基盤を提供していくことにある。パブリッッククラウドの簡素なオペレーションやアジリティー(俊敏性)、プライベートクラウドのリスク軽減やコスト抑制といった両方の特性を生かした最適なIT利用環境を提供できるようにしていきたい」
図2に示したのが、APEXのポートフォリオである。ポイントは、図の上部にある「APEXコンソール」がユーザーからするとサービスの「窓口」となり、これを通じて最適なクラウド形態や各種サービスを組み合わせて利用することができる。「お客さまに幅広い選択肢を提供したい」と強調していたのも印象的だった。
図2:APEXのポートフォリオ(出典:デル・テクノロジーズ)