“摩擦レス”なハイブリッドクラウドを実現--日本IBMが「Power10」搭載サーバー「Power E1080」を国内発表

渡邉利和

2021-09-13 10:21

 日本IBMは9月7日、「IBM Power10」プロセッサーを搭載する最初のサーバー製品「IBM Power E1080」の出荷を17日に開始すると発表した。「IBM Power9」を搭載するサーバー製品「IBM Power System E980」の後継機種と位置付けられる。

IBM Power E1080の概要
IBM Power E1080の概要

 E980との比較では、「ソケットおよびシステムレベルで、コア当たりのパフォーマンスが最大30%向上し、処理性能が50%以上向上」「同じ処理をする際のエネルギー消費量が33%削減」、コア当たりの暗号化エンジンの数が4倍になり、AES暗号化のコア当たりの処理が2.5倍高速になったという。また、コアごとに4つのMMA(Matrix Math Accelerator)エンジンを投資し、AI(人工知能)推論の精度を最大5倍以上向上するという。

 概要を説明した同社 理事 テクノロジー事業本部 IBM Power事業部長の黒川亮氏は「昨年(2020年)8月のHot Chips(HC32)において『商用で最新、最速の7nmチップ』を発表してから準備を整えてきた」と語り、Power10の技術発表から製品出荷までの約1年間の取り組みを振り返って、「Power事業部の独立(サーバー事業と分割し、専門家集団となった)」「パートナーファースト(Powerのビジネスの90%はパートナーとの協業から始まる)」「ブログやSNSを通じた情報発信やシミュレーターの提供(先行者メリットを望む顧客向けなど)」といった活動を紹介した。

日本IBM 理事 テクノロジー事業本部 IBM Power事業部長の黒川亮氏
日本IBM 理事 テクノロジー事業本部 IBM Power事業部長の黒川亮氏

 また、Power10の処理性能に関して、同氏は「商用で最も実績があり、最速なのは言うまでもなくPowerだ」と自信を示すとともに、プロセッサーレベルのメモリー暗号化が組み込まれたことも強調し、製品のキーメッセージとして「摩擦レス(Frictionless)なハイブリッドクラウド経験」を挙げた。

 “摩擦レス”という意味について同氏は「ビジネス要求に対する摩擦レス(物理的な拡張を伴わず、ソフトウェアで分単位で活性拡張が可能。ダイナミックキャパシティーを利用すればCPU、メモリー、OSを使用分だけ分単位で支払い可能)」「セキュリティに関して摩擦レス(プロセッサーレベルのメモリー暗号化。ソフトウェアの変更不要でハードウェアを入れ替えるだけで最高レベルのセキュリティを導入可能)」「増え続けるデータと分析に対する摩擦レス(コアに直接搭載されたAI推論エンジン。ONNIX準拠のAI学習モデルをサポート)」「安心・安全なインフラ(自動回復技術、自己修復機能、プロセッサーやシステムブロックの冗長化。Power Virtual Serverとの連携でDR/BCP(災害復旧/事業継続計画)を摩擦レスで実現)」という4点をアピールした。

 続いて、同社 テクノロジー事業本部 IBM Power事業部 製品統括部長の間々田隆介氏が製品の詳細を説明した。Power E1080は、本体ノード(System Node)に加えてシステム全体の生業を行なう制御ユニット(System Control Unit)、I/O拡張のためのI/Oドロワー(PCIe Expansion Drawer)で構成される。サイズは、本体ノードは5U、システム制御ユニットは2U、I/Oドロワーが4Uとなる。本体ノードは1システム当たり最大4ノードまでで、I/Oドロワーは本体ノードごとに0~4台で最大構成では16台となる。

日本IBM テクノロジー事業本部 IBM Power事業部 製品統括部長の間々田隆介氏
日本IBM テクノロジー事業本部 IBM Power事業部 製品統括部長の間々田隆介氏

 本体ノードにはPower10が4基搭載され、プロセッサー当たりのコア数は10、12、15のいずれかを選択可能なので、本体ノード当たりのコア数は40、48、60のいずれかとなる。また、コア当たりのスレッド数は8なので、最大では本体ノード当たり480スレッドの実行が可能。メモリーモジュールにはDifferencial DIMM(DDIMM:差動DIMM)を採用し、プロセッサー当たりのメモリー帯域幅は409GB/sとなる。転送速度に加えて信頼性も向上しており、「システム全体で信頼性が2倍に向上した」という。メモリースロット数は64基で、最大16TB搭載可能。拡張スロットには次世代のPCIe Gen5を8スロット搭載、I/Oドロワーには12スロットが装備される。

IBM Power10プロセッサーの概要
IBM Power10プロセッサーの概要

 このほか、Red Hatとの連携がさらに強化された点もポイントで、新たに同社のKubernetes実装である「Red Hat OpenShift」を分単位での従量課金で利用可能になったという。

 販売に関しては、同じ処理量を基準とした場合、Power E1080はPower E980と比較してエネルギー消費量を33%削減でき、脱炭素に貢献できることから、「SDGs割引」も提供されるという。IBM Power E1080、IBM FS5000 Storage、IBM Power/Storage Expert Careを対象としたもの。なお、価格は顧客ごとにオーダーメイドで仕様を決定して個別見積もりとなるが、おおよそ「数千万円のレンジ」(黒川氏)だという。

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