松岡功の「今週の明言」

キンドリルジャパン社長が課題に挙げた「ポテンヒットのようなミス」とは

松岡功

2021-12-17 10:55

 本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。

 今回は、キンドリルジャパン 職務執行者社長の上坂貴志氏と、サイオス 代表取締役社長の喜多伸夫氏の発言を紹介する。

「分社化によってお客さまに対して『ポテンヒットのようなミス』がないようにしたい」
(キンドリルジャパン 職務執行者社長の上坂貴志氏)

キンドリルジャパン 職務執行者社長の上坂貴志氏
キンドリルジャパン 職務執行者社長の上坂貴志氏

 キンドリルジャパンは先頃、日本IBMから9月1日に分社した後、初めて記者会見を開いた。日本IBMの執行役員からキンドリルジャパンの社長に就任した上坂氏の冒頭の発言は、オンラインで行われたその会見の質疑応答で、今後の課題について聞いた筆者の質問に答えたものである。

 キンドリルジャパンは、親会社の米Kyndrylが米IBMからITインフラの構築や運用サービス事業を引き継ぐ形で9月に事業を開始したのに伴い、日本でも同じタイミングで活動を始めた。上坂氏は同社がカバーする市場について図1を示しながら、「今後も7%の年間成長率(CAGR)が見込まれている」と、有望であることを強調した。

図1:Kyndrylがカバーする市場の成長性(出典:キンドリルジャパン)
図1:Kyndrylがカバーする市場の成長性(出典:キンドリルジャパン)

 会見の内容は速報記事をご覧いただくとして、ここでは会見で筆者が聞いた2つの質問に対する上坂氏の回答を紹介したい。

 1つは、「活動を始めて3カ月余り経ったが、社名から『IBM』が消えてやりにくいことはないか」。これに対し、上坂氏は次のように答えた。

 「私自身はそう感じることはない。ただ、28年間IBMで仕事をしてきたので、例えば電話で名乗る際に思わず『日本アイ…』と口に出てしまうことはまだある。やりにくさは感じていないが、立場が変わったことで改めてIBMのブランド力の強さを実感している。逆に、これまでと同じ仕事を共にやってきた社員たちと新たにスタートアップできることにやり甲斐を感じており、今後はKyndrylというブランドの向上に尽力していきたい」

 実は、この質問をしたのは、日本IBMがおよそ30年前、3つに分社した際、本体以外の2社にも「IBM」の名が入っていたものの、「IBMの社員ではなくなった」と受け止めた社員やその家族の心情を取材したことがあったからだ。時代は変わったが、やはりそうした心情はあるだろう。この質問はマネジメントとしてこの点をどう受け止めているかを聞いたものである。

 もう1つは、「ビジネスおよびマネジメントの両面において最大の課題は何だとお考えか」。これに対し、上坂氏は次のように答えた。

 「両面における現時点での大きな課題として挙げられるのは、日本IBMから当社に引き継ぐ業務において、両社の間の連携に隙間ができてしまい、野球で言えばポテンヒットを許してしまうようなミスによって、お客さまにご心配やご迷惑をおかけしないようにすることだ。この点については、両社で細心の注意を払っているつもりだ」

 「ポテンヒット」と言う表現が印象に残ったので、明言として取り上げた次第である。上坂氏の今後の経営手腕に注目したい。

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