本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、Dropbox Japan 代表取締役社長の五十嵐光喜氏と、サイオス 代表取締役社長の喜多伸夫氏の発言を紹介する。
「電子署名の普及に向けて非常に大きな流れができつつある」
(Dropbox Japan 代表取締役社長の五十嵐光喜氏)
Dropbox Japan 代表取締役社長の五十嵐光喜氏
Dropbox Japanは先頃、電子署名サービス「HelloSign」を日本で正式に提供開始すると発表した。五十嵐氏の冒頭の発言はオンライン形式での発表会見で、新型コロナウイルス感染症の防止策として広がったテレワークや行政のデジタル化の推進に向けて、電子署名の普及に追い風が吹いていることを述べたものである。
HelloSignはDropboxの機能の一部としてシームレスに組み込まれているため、Dropboxから直接重要なドキュメントの送信や署名が可能となり、それらを1カ所に整理して保存することができる。署名が完了すると、署名済みコピーが自動的にDropboxに保存される仕組みとなっている。
五十嵐氏はHelloSignについて、「このサービスは特に多くの契約締結業務が発生する企業にとって最適なものだ。Dropboxに保存したファイルで電子署名業務を完了し、署名が完了したファイルをDropbox内に自動で保存・整理することができる。電子署名に関連する一連の業務フローと署名文書管理を統合することで、さらにお客さまの業務効率向上に貢献できると確信している」と期待のほどを示した。
会見での説明内容については関連記事をご覧いただくとして、ここでは五十嵐氏の冒頭の発言に注目したい。
同社による調査で、テレワークを週に4日以下の形で実施している企業の課題として、押印作業を行うために出社せざるをえないと答えた企業がおよそ4割に上ったという。
また、電子署名システム導入の検討状況を聞いたところ、「既に導入済み」(8%)、「現在検討中」(18%)、「今後検討する予定」(41%)、「検討する予定はない」(33%)となった。これはおよそ6割が「検討」とも見て取れる。五十嵐氏の冒頭の発言は、この調査結果を踏まえたものである。
さらに、表に見るように、政府もデジタル化の一環で「脱ハンコ」の方向に動いている。直近では、菅義偉首相が10月7日に規制改革推進会議で、押印廃止など行政手続きの抜本的な見直しを全省庁に指示した。国の行政手続きの押印や書面・対面のやりとりを削減するため、年内に政省令を改正する方針を確認し、2021年の通常国会で関連法令の改正も目指す構えだ。
「脱ハンコ」に向けた行政の動き(出典:Dropbox Japanの資料)
五十嵐氏が言う通り、まさしく大きな流れができつつある中で、Dropboxがどのように躍進を遂げていくか。注目していきたい。