メガバンクがメガクラウドサービスを積極的に利用しようという動きが活発になってきた。その組み合わせもかつての都市銀行とメインフレーマーの連携による勢力争いを彷彿とさせる。このまま本丸である「勘定系」のクラウド化に向けた競争が繰り広げられるのか。
「みずほFGとGoogle Cloud」がDX分野で戦略的提携
「おかげさまでGoogle Cloudは今や日本でも非常に幅広い業界で使っていただけるようになってきた」
グーグル・クラウド・ジャパン代表の平手智行氏は、同社が4月6日にオンラインで開いたメディア向けの事業戦略説明会で一部の顧客名を掲載した表1を示しながら、こう胸を張った。表1で注目されるのは「MIZUHO」、メガバンクの一つであるみずほフィナンシャルグループ(以下、みずほFG)の名があることだ。
表1:Google Cloudを利用する日本の顧客の一部(出典:グーグル・クラウド・ジャパン)
実は、みずほFGの中核であるみずほ銀行とGoogle Cloudの関係については、2018年4月25日掲載の本連載記事「グーグルの会見で聞いた、みずほ銀行のクラウド事情」で記したように、みずほ銀行がGoogle Cloudをデータ分析において試験的に利用する形でスタートしていた。したがって、Google Cloudの顧客紹介にはこの頃からMIZUHOが名を連ねてきたと見られるが、このほど、さらに踏み込んだ関係になった。
みずほFGとグーグル・クラウド・ジャパンが3月23日、ともに発表する形で、デジタルトランスフォーメーション(DX)分野において戦略的提携に合意したことを表明したのだ。詳しい提携内容は速報記事をご覧いただくとして、みずほFG 執行役社長の木原正裕氏とGoogle Cloud 最高経営責任者(CEO)のThomas Kurian氏が発表に際してそろってコメントを寄せているところを見ても、両者ともに相当の力の入れようである。
ただ、提携内容を見ると、現時点では銀行の業務システムの本丸である「勘定系」のクラウド化を図るわけではなさそうだ。とはいえ、銀行業務のDXに向けたプラットフォームとしてGoogle Cloudを本格的に採用するという意図を、筆者は強く感じた。
このみずほFGとGoogleCloudの提携だけでも興味深いが、実はこの分野ではさらに注目すべき状況になっていることに気付いた。みずほFGとGoogle Cloudの提携だけでなく、三井住友フィナンシャルグループ(以下、SMBCグループ)とMicrosoft、そしてメガバンクのシステムのクラウド化に先鞭(せんべん)をつけた三菱UFJフィナンシャル・グループ(以下、MUFG)とAmazon Web Services(以下、AWS)といった、メガバンクとメガクラウドベンダーの連携による勢力争いの構図が浮かび上がってきたのだ。