SAPジャパン、中堅企業向けのパッケージプログラム--「SAP S/4HANA Cloud」導入を支援

寺島菜央 (編集部)

2022-07-06 14:53

 SAPジャパンは7月5日、中堅中小企業向けに「SAP S/4HANA Cloud」の導入を支援する「All-in-Oneパートナーパッケージプログラム」の提供を開始した。同日開催されたプレスセミナーでは、ニチバンの導入事例が紹介された。

 同プログラムは、SAPのパートナー企業が提供する導入テンプレートのうち、中堅中小企業に対応テンプレートをパッケージ化したもの。導入範囲や期間、費用のモデルケースを提示することで、パートナーとともに顧客の投資効果の最大化を狙う。

 中堅中小企業では、企業全体の業務プロセスの最適化につなげるため、幅広い業務領域にSAP S/4 HANAを一括して導入しているという。その理由には、事業成長に追随するための経営基盤作りや、業務標準化を通した生産性の向上がある。また、ITツールの導入に際してデジタルトランスフォーメーション(DX)人材の不足や予算の制約などがある中、統合性が高く幅広い業務を網羅したシステムとして採用し、運用負荷の低減を狙ってクラウド環境での導入をしているケースが少なくない。

 SAP S/4HANAを導入する中堅中小企業の統合基幹業務システム(ERP)プロジェクトの成功要因としては、トップダウンによるプロジェクト推進と全体の最適を意識する経営層の思考がある。さらに、SAPの標準機能を基盤に業務改革を推進し、パートナーテンプレートを活用することだという。

 今回のパッケージプログラムの特徴としては、「パートナーの経験に基づいた成功に導くプロジェクトの方針や方法論がある」「対象業種が細業種にわたって明確である」「各業界や業務範囲ごとに事前定義された業務プロセスと機能群がある」「パートナー独自のノウハウや強み、各種導入ツールを活用することができる」「導入期間が明示され、12カ月程度であること」「導入費用が明示されている」といったことが挙げられた。

中堅中小企業向けパートナーテンプレートSAP S/4HANA Cloud 対応 All in Oneの特徴
中堅中小企業向けパートナーテンプレートSAP S/4HANA Cloud 対応 All in Oneの特徴

 SAPジャパン ミッドマーケット事業統括本部長の田原隆次氏は「これらの条件を満たし、企業がプロジェクト方針を理解した上で、限られた資源の中でリスクを抑えて短期間で導入することができ、早期の効果創出とリターンの最大化を得ることができる」と話した。

 7月5日時点で同ソリューションに賛同しているパートナーは、アイ・ピー・エス、NTTデータ グローバルソリューションズ、コベルコシステム、JSOL、SHINコンサルティング、ビジネスエンジニアリング、日立システムズ、フォーカスシステムズ、フリーダムの9社。まずは、組立製造、プロセス製造・医薬、商社卸、プロフェッショナルサービス向けのテンプレートから提供を開始し、順次拡大していく予定だ。

 各パートナーの導入方針や方法、プロジェクト計画に基づいた場合の一般的な導入費用は年商の0.1%、期間は12カ月前後を想定しているという。なお、導入費用には製品ライセンス費用は含まれない。また、同ソリューションは各パートナーによる間接販売を行うという。

組立製造業におけるパートナーラインアップ
組立製造業におけるパートナーラインアップ

 同サービスを導入したニチバンは、創業100周年を迎えた2018年に中長期ビジョンとして「NICHIBAN GROUP 2030 VISION」を掲げており、中期経営計画ではITの積極的な活用をテーマの1つとしている。また、ERPパッケージ「SAP R/3」の終了に向けて、システムの刷新を集中的に推進していく構えだ。

 情報システム部はDXを推進するため、DX成熟度とITにおける重点取組テーマを設定した。システム刷新の対象外である非基幹業務のシステムはSoftware as a Service(SaaS)を利用。また、基幹業務については短期間でERPの導入を実現するため、テンプレート使用により短期間で品質の良いシステム導入ができることや、国内外で使用できるシステムであることをポイントに、SAP S/4HANAとアイ・ピー・エスが提供する「Easy One」を導入したという。

 短期間でSAP S/4HANAを導入することができた要因として、執行役員 経営企画室 情報システム部長の奥山尚氏は、「全社によるトップダウンでの意識づけや導入前の準備工程で調査・計画立案を実施したことが挙げられる。また、標準機能・テンプレートの活用に加えて、プロジェクト憲章の作成による意識の統一と判断基準の明確化が結果につながった」とコメントした。

 一方、機能の標準化による多くの既存業務手順の変更と、個別最適化された機能の削減などによる業務効率の低下により、システム利用者に多くの負担がかかっていることを指摘。基幹システム運用プロジェクトを立ち上げ、新たな基幹システムの安定運用と活用のための改善活動に取り組むという。

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