VMwareの最高経営責任者(CEO)を務めるRaghu Raghuram氏が7月28日、日本メディアのグループインタビューに応じ、Broadcomによる買収やマルチクラウド戦略について語った。
VMware最高経営責任者のRaghu Raghuram氏
BroadcomとVMwareは米国時間5月26日、BroadcomがVMwareを610億ドル(約8兆2600億円)で買収することに合意し、関係当局による審査・承認を経て、Broadcomの2023事業年度(2023年10月期)までに完了する見込みとなっている。Broadcomの買収目的は、VMwareの広大なエンタープライズソフトウェアのポートフォリオになり、特に「Tanzu」のKubernetesソリューションを挙げる。2019年に買収した旧Symantecのセキュリティ事業ポートフォリオをVMwareブランドに統合していく方向性を打ち出している。
Raghuram氏は、この買収に関する協議が進行中だとして、買収完了後に予定している経営戦略や製品展開などの具体的な計画を明言しなかったが、「Broadcomの傘下となってもVMwareのこれからの成長が期待されており、現在のロードマップも維持されるので、顧客の期待に応え続けていく」と述べた。
この買収をめぐっては、Broadcomの提示額がIT産業界において極めて大規模なことや、Broadcomが買収企業の事業体制をドラスティックに変更するなど、IT産業界で大きな注目を集め続けている。質疑応答では国内メディアから、「Broadcomは今後の新規投資に消極的ではないか?」「IT産業界では当初この買収に対するポジティブな反応が少なかった印象だが、現在はどうか?」といった質問が出た。
これに対してRaghuram氏は、「現在は双方(BroadcomとVMware)がお互いの理解を深めているところであり、Broadcomは特にTanzuに言及しているが、両者による新たなポートフォリオの可能性を打ち出していくことになる」「発表当初はその金額故に非常に注目されたが、2カ月が経ち落ち着いてきた。この間にあらゆる関係者への説明を尽くしたことで、現在はポジティブな評価だ。VMwareの歴史の大半は巨大企業の傘下(EMCやDell Technologies)にあった。Broadcomの傘下になっても成長していける(と当社の歴史が証明している)」などと答えた。
また2021年11月にDell Technologiesからスピンオフして以降の経営についてRaghuram氏は、「(今回の買収提案を受けるまでの)短い期間だったが、完全に独立した上場企業のCEOとして非常にエキサイティングな経験であり、株主利益を最大化し、顧客や従業員、パートナーらの価値を向上させ実績を出すことができた」と語った。
BroadcomとVMwareの主な買収合意事項
もう一方のテーマのマルチクラウドは、Raghuram氏が掲げるVMwareの経営戦略の中心にある。オンプレミス、プライベートクラウド、パブリッククラウド、エッジにまたがる環境のあらゆるワークロード、アプリケーションを柔軟かつセキュアに利用し、統合的にシンプルに運用できる環境を実現するソリューションポートフォリオを拡充している。
「2年前の調査で顧客の7割が2つ以上のクラウドを使い、4割が3つ以上を使っていた。現在はこの割合がさらに増しているだろう。分散化が進むマルチクラウドを顧客が適切かつ柔軟にコントロールできる方法と選択肢を提供していく。6~7年前のキーワードは『クラウドファースト』だったが、現在は『クラウドスマート』になる」とRaghuram氏。
ここでは、Tanzuなどによるレガシーアプリケーションのモダナイズ(近代化)やモダンアプリケーションの構築・展開、仮想化により柔軟なITインフラを実現する「Software Defined Data Center(SDDC)」、デスクトップ仮想化基盤などによる柔軟で安全な働き方――を実現するため5つのプラットフォームソリューションを展開する。
Raghuram氏は、同社が照準とするアプリケーション基盤やクラウドインフラ/管理、セキュリティなどの各種市場の合計が1500億ドル(約20.3兆円)規模に上るとし、この有望な市場で同社ビジネスのさらなる成長を成し遂げられると強調。「VMwareはあらゆる社会インフラを支える信頼を獲得し、広範なポートフォリオを有し、あらゆるクラウドプロバイダーとの優れたエコシステムを持つユニークな存在である」と語った。
マルチクラウド戦略におけるポートフォリオ