松岡功の一言もの申す

業界・サービス別クラウドに対するマイクロソフトの見解

松岡功

2014-10-22 11:19

 クラウドサービスプロバイダー大手各社がこのところ、業界やサービスごとのクラウドサービスに注力している。だが、大手の1社である米Microsoftはそうした戦略をとっていない。なぜか。同社幹部に聞いてみた。

相次いで登場してきた業界・ソリューション別クラウド

 マーケティングクラウドやセールスクラウド、サービスクラウド、アナリティクスクラウド、データベースクラウド……。あるいは、自治体クラウド、農業クラウド、建設クラウド、教育クラウド……。

 このところ、クラウドサービスプロバイダー大手各社から、こうした業界やソリューションごとのクラウドサービスが相次いで提供されるようになってきた。とりわけ、米Oracleと米Salesforce.comが最近相次いで開催した米国でのプライベートイベントで、それぞれに数多くのそうしたサービスを発表したこともあり、バリエーションが一気に広がった感がある。

 クラウドサービスの草分け的存在であるSalesforce.comがもともとCRMからスタートしたことを考えると違和感はないのかもしれないが、同社のCRMクラウドは当初のカテゴリーでいえばSaaSだ。しかし、このところ相次いで登場している業界・ソリューション別クラウドサービスは、PaaSとSaaSの間に位置付けられるイメージが強い。

 そんな中、そうした業界・サービス別クラウドを自らは展開していない米Microsoftのクラウド事業を担当する幹部に話を聞くことができたので、同社の業界・サービス別クラウドに対する見解を尋ねてみた。

クラウドプラットフォームに徹するマイクロソフト


米Microsoftコーポレートバイスプレジデント 沼本健氏

 Microsoftの幹部とは、同社コーポレートバイスプレジデントでクラウド&エンタープライズ事業のマーケティング責任者を務める沼本健氏のことだ。来日した沼本氏は10月15日、日本マイクロソフトが開いた記者会見で、IoT(Internet of Things)の最新の取り組みと、クラウド基盤サービス「Microsoft Azure」の国内ビジネス強化について説明した。

 IoTの最新の取り組みについては他稿に委ねるとして、Microsoft Azureの国内ビジネス強化については、2月に東日本(埼玉県)と西日本(大阪府)に開設したデータセンターを、国内ビジネスの好調ぶりに伴って増設することを明らかにし、「これも日本への投資を続けるという米国本社の心意気の表れだ」と強調した。

 この会見の質疑応答で、筆者は沼本氏に、業界・サービス別クラウドに対するMicrosoftの見解を尋ねてみた。すると同氏は次のように答えた。

 「今はクラウドという表現がトピックになることから、さまざまなクラウド形態が見受けられるが、いずれ市場が成熟していくにつれ、プロバイダーが提供する業界・サービス別クラウドがどうというより、確かな技術に裏打ちされた汎用性の高いクラウド基盤の上で、パートナーやユーザーがそうしたサービスをどんどん構築していく時代が訪れる。当社はそうした皆さんに活用していただけるクラウド基盤の提供に徹したいと考えている」

 つまり、MicrosoftはOracleやSalesforce.com のように業界・サービス別のクラウドを自ら手掛けることはないということだ。これはまさしくクラウドサービスプロバイダーにおけるマーケティング戦略の違いであり、エコシステムの作り方の違いだ。

 さて、どちらがパートナーやユーザーの支持を得られるか、注目しておきたい。

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ZDNET Japan クイックポール

マイナンバーカードの利用状況を教えてください

NEWSLETTERS

エンタープライズコンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]