本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉をいくつか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、米MicrosoftのSatya Nadella 最高経営責任者(CEO)と、NECの加藤一郎 シニアマネージャーの発言を紹介する。
「過去の遺産を引きずることなく、新たな世界にまい進していきたい」 (米Microsoft Satya Nadella CEO)

米MicrosoftのSatya Nadella CEO
日本マイクロソフトが10月1日、都内ホテルで新しい個人向けOfficeを発表した。発表会見には、2月に米Microsoft CEOに就任以来初めて来日したSatya Nadella(サティア・ナデラ)氏が登壇。新製品への力の入れようとともに、同社の事業のコアについて説明する中でCEOとしての決意を語ったものである。
日本マイクロソフトがこの日発表したのは、プリインストール版Officeにクラウドサービス「Office 365」を融合した「Office Premiumプラス Office 365」と、個人向けのサブスクリプション版「Office 365 Solo」。
新製品の内容についてはすでに報道されているので他稿に委ねるとして、ここではNadella氏が説明した同社の事業のコアについて取り上げたい。
Nadella氏はまず、最近のITを取り巻くパラダイムの変化として「モバイルファーストと「クラウドファースト」の2つを挙げ、「モバイルファーストのエクスペリエンスを実現するためには、豊かなクラウドのインフラが必要となる。モバイルファーストとクラウドファーストという動きは非常に密接につながっている」と説明した。
その上で、同社としてモバイルファーストとクラウドファーストに向けてどのような貢献ができるかについて、次のように語った。
「企業に対しても個人に対しても、われわれが貢献できるのは、プロダクティビティ(生産性)の向上と、さまざまな製品・サービスやエコシステムからなるプラットフォームを提供することだ。プロダクティビティの向上とプラットフォームの提供こそが、われわれの事業のコアであり、DNAである」
さらに、続けてこう強調した。
「われわれはこうした取り組みを新しいコンテキストの中で実現していく。過去の遺産を引きずることなく、モバイルファースト、クラウドファーストという新たな世界に向けてまい進していきたい」
冒頭の発言はこのコメントのエッセンスである。とりわけ「過去を引きずることなく」という一言にCEOとしての決意のほどがうかがえる。
実直なエンジニアという感じのNadella氏だが、その立ち居振る舞いで最も印象に残ったのは、威厳を感じる中にもソフトな雰囲気が漂っていることだ。これまで同社のCEOを務めてきたBill Gates氏やSteve Ballmer氏のような強烈なオーラはないが、ソフトな雰囲気に深い人間的魅力を感じさせる。