グリッドコンピューティングという概念が一般的に知られるようになって、企業の情報システムについて「分散+統合」をどう進めていくか、という議論が展開されるようになっている。しかし、グリッドそのものに対するベンダーの取り組みは、2003〜2004年ほどではないが続いている。
実際、日本ヒューレット・パッカード(日本HP)は金融機関を対象にしたグリッド技術の検証施設「HP金融グリッドセンター」を2005年9月に開設、11月にはグリッド分野でノベルとの協業を開始している。また、日本アイ・ビー・エム(日本IBM)は2005年8月に、肥後銀行(熊本県熊本市)にデータグリッドを応用したシステムを導入している。
2006年になってからだと、NECは2月2日に「グリッドマネジメントフォーラム」と呼ばれる、企業ユーザーを対象にしたイベントを開催している。
NECでは、企業の情報システムの問題点として、システムが複雑化・分散化していることで運用管理が複雑になっているとの認識を示している。もうひとつの問題点として、システム全体を単一のものとしてとらえた時に、最適な環境として運用することが難しくなっていることを例示している。同社は、これらの問題を解決する手段としてグリッドを提案している。
イベントでは、2004年8月に設立された同社のグリッド専門組織である「グリッド推進センター」のセンター長を務める石倉直人氏が、NECとしてのグリッドへの取り組みなどを説明した。
ディザスタリカバリにも有効
石倉氏は、現在の情報システムは「業務ごとにインフラが独立していることで、運用管理が複雑・煩雑になっている。これに伴ってリソースの活用も非効率になっている」と指摘。最近よく聞かれる“個別最適”の問題である。
NECでも同様の問題を抱えており、この状況を改善するために、またIT関連のコスト削減策として、同社はサーバ統合を進めている。ちなみに、同社はそこから得られたノウハウを蓄積して、サーバ統合の方法論を「ALCHEMIX」(アルケミクス)としてまとめている。同社は、まずサーバを統合して、その後で企業内で全体最適化されたシステムにグリッドを導入すれば、より柔軟なシステムを構築できるとしている。
「統合化されたサーバにグリッドを導入すれば、サーバを共通資源として業務間でリソースを融通することができる。加えて、障害や負荷の状況に応じて、リソースの割り当てを迅速に変更できる。また、災害が起きた時の対策基盤として、グリッドを活用できる」(石倉氏)
統合化されたサーバにグリッドを導入することで、TCO(総所有コスト)削減とシステムのサービス品質向上を図れる。また、リソースを要求にあわせて供給でき、ディザスタリカバリにも対応できるという。
150億円プロジェクト
NECは、これらのグリッドを構築するために、ミドルウェア「WebSAM」シリーズで対応する各種ソフトを用意している。「WebSAM SigmaSystemCenter」(SSC)は、サーバやストレージ、ネットワーク、OSなどのインフラの統合管理基盤を形成する。
また、「WebSAM GlobalGridOrganizer」(GGO)は、システム障害や負荷が高まった時の処理をほかのシステムに割り当てるなどの機能を持つ。なおGGOは「2006年の半ばにも製品化される予定」(石倉氏)という。