日本ヒューレット・パッカード(HP)とノベルは11月30日、金融分野向けグリッドコンピューティングや半導体設計(EDA)を対象にしたシステム提供で協業することを発表した。
両社は、OSSの単体での検証から、商用ソフトを活用した金融グリッドシステムや半導体設計アプリケーションの検証、ベンチマークや性能設計までの検証体制を構築する。検証には、日本HPが9月に開設した「日本HP金融グリッドセンター」を活用する。
両社が検証するOSSは、J2EEアプリケーションサーバ「JBoss Application Server」、同ソフトを含むミドルウェア製品群である「JBoss Enterprise Middlewear System」(JEMS)とデータベース「MySQL」。
グリッドの基盤とグリッドを自動的に管理するソフトでは、米UNITED DEVICESの「Grid MP」と米Cassattの「Cassatt Collage」、グリッド用のアプリケーションでは、カナダAlgorithmicsの「Algorithmics Algo Risk」とカナダのPlatform Computhingの「Platform Symphony」を検証する。半導体設計アプリケーションでは、米Cadence、米Synopsys、米Mentor Graphicsのものを検証する。
また日本HPは、ノベルの企業向けLinuxディストリビュータ「Novell SUSE Linux Enterprise Server 9」(SLES 9、価格は16万5690円)の販売・サポートを12月8日から開始、SLESに対応する日本HP製品やサービスを拡大する。この取り組みで日本HPは、SLESとサーバ「HP ProLiant」ファミリーの拡販を目指す。
日本HPでは、SLES 9のヘルプデスク支援から障害対応までのサポートを提供する。これでハードウェアからLinux OSまでの一括した窓口でのサポートを提供することになり、企業ユーザーは安心してLinuxベースのシステムを導入できると、そのメリットを強調している。
日本HPでは以前から、短期の定額制システム構築パッケージサービスであるエクスプレスサービスを提供している。今回の協業で、エクスプレスサービスにSLES 9への対応を追加する。また、クラスタ導入支援コンサルティングなどのサービスも追加する。
JBoss Application Serverの対象基本ソフト(OS)にもSLES 9に追加、サポート価格56万7000円で提供する。日本HPによれば、サポート価格は約45%の値下げになるという。また、日本HPがJBoss開発者に提供する支援コンサルティングサービスの対象OSにもSLES 9を追加する。
日本HPの執行役員でエンタープライズストレージ・サーバ統括本部長を務める松本芳武氏は、「Linuxはネットワークのエッジ系サーバで多用されており、エッジ領域に加え、ディレクトリ管理などのインフラストラクチャの領域で使われるようになっている。つまりエッジやインフラストラクチャの領域では、Linuxを含めたOSSは成熟の段階にある」と説明している。
「エッジ、インフラストラクチャとは別の領域であるデータベース分野において、Linuxは現在成長を始めている。そして、Linuxは、ERP(統合基幹業務パッケージ)やSCM(サプライチェーン管理)などのビジネスアプリケーションの領域へも勢力を拡大している」(松本氏)
松本氏によれば「米Wall Streetの金融各社では、リスク分析やアセット分析などに使うグリッドを、Linuxサーバ1000〜2000台で構築するのが大きな流行になっている」という。この動きは日本にも波及しており、「日本の大手金融機関でも10〜20台のLinuxサーバで構築している事例が出始めている」(松本氏)。
グリッドはハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)と呼ばれる分野に属する技術であり、エンタープライズストレージ・サーバ統括本部でOpen Source & Linux推進部で推進マネージャを務める赤井誠氏によれば、「2004年に日本HPはx86サーバのHPC市場で首位のシェアを確保している」という。また赤井氏の説明では「日本のHPCは大学などの研究機関よりも製造業・金融機関での導入が進んでいる」という。
グリッドを含めたHPCで強みを持つ日本HPは、これから日本の金融分野でもグリッド活用が大きな動きになると見て、Linuxを利用した金融グリッドで市場をリードしたい考えだ。