仮想化技術によってサーバを統合することで、効率的な運用体制を構築できたとして、データセンター内でのストレージやネットワークを効率的に運用することはできるだろうか。依然として縦割りのストレージが並んだままで“データの孤島”ばかりで、使いにくいシステムとなってしまう可能性があるのではないだろうか。
電源などを2重化して可用性を高めたファイバチャネル用の大規模スイッチである、SAN(Storage Area Network)ダイレクタやスイッチを開発・製造するブロケード コミュニケーションズ システムズは10月24日、大企業・中堅企業などが所有するデータセンターの効率性や信頼性、適応性を向上させる新構想「Brocade Data Center Fabric(DCF)アーキテクチャ」を発表した。
今回発表されたDCFアーキテクチャについて、米Brocade Communications Systemsの最高技術責任者(CTO)であるDan Crane氏は、「ストレージネットワークとサーバ間クラスタリングを単一の統合データセンターインフラストラクチャに組み込むことで、データセンター内での接続性を簡素化するとともに、コストの削減を実現するというものだ。このアーキテクチャに基づけば、仮想サーバや仮想ストレージの動的変化に適応するだけでなく、増大するアプリケーションの作業負荷や企業内で日々爆発的に増加するデータにも対応できる」と説明している。
同氏の説明によれば、現在のデータセンターでは、大きな変化が起きているという。一つは、SANによってストレージが統合されているという事態だ。もう一つが仮想化技術によってサーバも統合されつつあるというものだ。この変化により、データセンター内では再設計が必要となっており、加えて、「サーバ、ネットワーク、ストレージをポリシーベースで自動的に稼働することが求められるようになっている」(Crane氏)。
サーバが統合されることで、サーバ台数が減少し、総所有コスト(TCO)も削減されるというメリットがもたらされている。しかし、その一方で高い割合のサーバが共有ネットワークに接続されていることから、より広帯域のネットワークが必要なっているのである。
また、統合されたサーバの中では、物理的障害などを避けて、仮想サーバ間をアプリケーションが移動することになる。こうした事態に対して、データセンターのインフラが対応し切れていないという課題が浮かびつつあるのだ。
統合されたストレージと統合されたサーバ。これらの事態は、データセンターに対して、より高いネットワーク性能や拡張性、帯域管理、パーティショニングを必要としているのである。加えて、よりいつでも柔軟にシステムを拡張させるためには、できる限りシステムの停止を避けるという必要も出てきている。
今回ブロケードが発表したDCFアーキテクチャは、こうした課題への解決策になるものと同社は説明している。
具体的には、仮想サーバが共有のストレージやほかのリソース、データにアクセスすると同時に、アプリケーションはどんなリソースに対してもアクセス・利用が可能であること、さらに、サーバからストレージまでのエンド・トゥ・エンドで管理・最適化が重要とされることだ。
考えてみれば、TCO削減や運用管理の簡素化を求めて、サーバやネットワーク、ストレージの各分野で技術革新が進んでいるわけであって、それを収めるデータセンターのアーキテクチャが、従来以前と同じであっていいわけではないはずだ。ブロケードのDCFアーキテクチャは、そうした各分野の技術革新、それに伴う管理体制の変化に追いつくためのものと言うことができるだろう。
もちろん今回のDCFアーキテクチャは、“絵に描いた餅”では終わらない。「今後、同社から発表・提供される製品群は、このDCFアーキテクチャに対応したものになる」とCrane氏は説明している。