日本ヒューレット・パッカード(日本HP)は9月29日、金融分野向けにグリッドコンピューティングの検証施設「日本HP金融グリッドセンター」を設立することを発表した。日本HPによれば、金融向けのグリッド検証施設は日本初という。
日本HPでは、パッケージ・ソフトメーカーやSI事業者と協調しながら金融グリッドセンターを中心として、金融向けグリッドの普及を促したい考えだ。また同センターを活用して、グリッドに最適なシステムインフラも提供していく。
インダストリマーケティング本部の三身徳人氏は、「センターは、グリッドシステムとグリッドを構成するサーバなどの販売活動の一環と位置付けている」として、センターの利用料金を原則無料にしていく。利用開始は11月上旬を予定している。
金融グリッドセンターでは、市場リスク分析や信用リスク分析、デリバティブ分析などの金融向けアプリケーションのグリッド上での動作検証やテスト環境の構築を実施する。
センターで提供されるサービスは、グリッド用ミドルウェアとアプリケーションの組み合わせ検証、グリッドと既存の対称型マルチプロセッシングとの性能比較、インテルXeonやAMDのOpteronへの最適化支援、新規グリッドインフラ開発など。
同センターにある設備は、ハードウェアとしてブレード型サーバで構成されるHP BladeSystem、タワー型サーバのHP ProLiant DL、大規模サーバのHP Integrityなど。最大32ノードでの検証ができる。ソフトでは、グリッド構築ミドルウェアとしてカナダPlatformのLSFとPlatform Symphony、米DatasynapseのDatasynapse Grid Server、基本ソフト(OS)はRed Hat Enterprise Linux、Novell SUSE LINUX Enterprise ServerとWindowsとなっている。
現在、日本でグリッドの利用は学術研究分野が中心となっているが、「欧米では既に金融機関をはじめとする企業業務での利用が一般的になっている」と三身氏はグリッドの応用分野の違いを指摘。さらに三身氏は「現在、米国の大手銀行はCPUの数が数千個というグリッドを導入しているが、日本の大手銀行はまだ数十個の規模にとどまっている」と日米金融機関のグリッドの導入状況の違いを説明した。ただ、「米国でも2〜3年前のグリッドはCPUの数が数十個だったことを考えると、日本でも2〜3年後には数千個のCPUが使われるだろう」と見通している。
これまで日本HPは、金融機関からのグリッドについての要望や検証などを個別に対応してきており、「日本での金融向けグリッドは十分な成長が見込める」(三身氏)としている。センターの利用企業について三身氏は「年間30社程度になるのではないか」と見ている。