マイクロソフトは9月8日、「Windows Server 2008 R2」の仮想化戦略について会見を行い、同製品のクラウドコンピューティング向け施策のほか、サーバ事業におけるパートナー支援策などを明らかにした。
マイクロソフトのサーバプラットフォームビジネス本部 業務執行役員 本部長である五十嵐光喜氏は、「Windows Server 2008 R2においては、仮想化市場を2倍に拡大する計画を打ち出している。この流れを加速させるために、顧客が仮想化の導入をためらう課題を解決する必要があり、マイクロソフトでは4つの施策を新たに提供する」と語った。
仮想化の課題となっているのは、仮想化に詳しい技術者がいないこと、導入効果を数値的に示すことが難しいこと、導入実績が少ないなどの要素であり、今回の施策は、これらの阻害要因を除去するものと位置づけている。その施策とは、「Hyper-V導入コーディネーター資格制度」、「新たな仮想化推進ツールの提供」、「データセンター市場に向けた新ライセンス制度の導入」、「仮想化コンピテンシープログラムの新設」の4つだ。
Hyper-V導入コーディネーター資格は、仮想化に関わる技術者育成を目的とするもので、無償でオンライントレーニングを実施し、合格者には検定書を提供する。また、約1万人規模のHyper-V仮想化コーディネーターから100人を対象に、「Hyper-V MCA(Microsoft Certified Associate)バウチャー」を第2四半期(10〜12月)に提供。最上位の「MCTS(Microsoft Certified Technogy Specialist)」の試験の費用を15〜20%割り引くといった特典も用意する。
さらに、技術者に対してテクニカルペーパーや導入事例集を提供する。五十嵐氏によると、現在47本のテクニカルペーパーが用意されており、今年1月から累計で6万以上のダウンロードがあったという。「この数は、競合他社に比べて2倍以上の本数だ。中でもアセスメント構成ガイドは、単に翻訳したものではなく、日本でテストを行い、パートナーとともに制作したもので、高い評価を得ている」と五十嵐氏は述べている。
2つ目の施策は、新たな仮想化推進ツールの提供だ。具体的には、Windows Server 2008 R2およびWindows 7に対応したアセスメントツールを、ウェブを通じて無償で提供する。同ツールでは、インベントリの収集、パフォーマンスの測定、サーバ統合計画レポートが可能であるほか、ROIツールを活用し、ユーザーの利用環境における仮想化の具体的な投資効果を推し量ることができるようになるという。自習書の提供やアセスメントサービスパートナーの育成にも取り組む考えで、現在19社がパートナーとして名乗りをあげている。五十嵐氏は、「アセスメントサービスパートナーによって、適切な形でツールを活用でき、ユーザーが仮想化に踏みだしやすい環境を提供できる」としている。
また、クラウドベンダー向けの開発テンプレートである「Dynamic Datacenter Toolkit」を無償で提供する。クラウド事業者に対して運用管理機能を提供し、事業者自身が自らサービスを提供できる環境を整える。
3つめの施策であるデータセンター市場に向けた新ライセンス制度としては、「Enrollment for Core Infrasructure(ECI)」を用意する。この制度は40プロセッサライセンス以上のユーザーが対象で、仮想化の導入コストおよび運用コストを大幅に引き下げることができる。ECIによるライセンス価格は、Windows Server 2008 R2、System Center Server Management Suite、Forefront for Client Securityの組み合わせが、40プロセッサライセンスで3100万円となる。