上司に認めてもらえないエンジニアは“社内”を捨てOSSで行こう

田中好伸(編集部)

2007-11-01 20:46

 比嘉康雄氏といえば、Javaのための「依存性の注入(Dependency Injection:DI)」と「アスペクト指向プログラミング(Aspect Oriented Programming:AOP)」をサポートした、フレームワーク「Seasar2」のチーフコミッターであり、日本のオープンソースソフトウェア(OSS)の世界でも有名人と言えるだろう。そうした比嘉氏がOSSに出会ったのは、「社内での評価に対する不満」がきっかけだという。

 電通国際情報サービス(ISID)に勤務している比嘉氏は先頃開催された情報処理推進機構(IPA)のイベント「IPAフォーラム2007」の中で、「開発を夢のある仕事にするには」と題する講演を行った。同氏は、2006年度の日本OSS貢献者賞を受賞している。

比嘉康雄氏 「技術者が陥りやすい罠は、いい仕事さえしていれば評価してもらえると考えていること」と警告する比嘉氏

 講演の中で比嘉氏は「技術者は、いい仕事さえしていれば会社は認めてくれるだろうと思いがちだ。しかし、これは技術者が陥りやすい罠」と、会社という組織の中で技術者は評価しづらい存在であることを説明している。

 「5年目、10年目に上の役職に就くことができなかった。これは技術者の仕事が管理職にとって評価しづらいからだと思って、周囲に“こういう仕事をしています”と自分がしていることを正しく伝えるように努力した」(比嘉氏)

 昇進できなかった比嘉氏は、「人前で自分の名前を言うことができなくなる」など、他人とのコミュニケーションができなくなっていたという。その後、比嘉氏は大阪で大きな開発案件を任され、「朝から夜の12時まで一所懸命働いて、デスマーチのプロジェクトを復活させた」ほどの仕事ぶりを見せた。

 しかし、そうした仕事にもかかわらず、比嘉氏への評価は「一番上から一つ下の評価」だったという。そうした経験から比嘉氏は改めて、こう思った。「管理職は組織を管理するのが仕事であって、エンジニアの技術の善し悪しはわからないし、エンジニア個人の生産性が高い低いは関係ない。会社という組織はエンジニアという個人を評価しにくい組織だと感じた」

 こうした思いを抱えていた同氏は「社内に閉じこもったままでは厳しい」として、社外のコミュニティーと接触するようになっている。そんな同氏が接触したのが、パソコン通信「ニフティ」だ。

 ニフティ内のオラクルデータベースを話題にしたフォーラムで、比嘉氏は情報を書き込むとともに、オフ会にも積極的に出席するようになっている。

 「以前では、人前で自分の名前を言えなくなるほどコミュニケーションするのが苦手だったが、そうした環境の中では周囲と自然とコミュニケートできるようになり、苦しいと感じることはなくなっていた」という同氏は、そうした場で「自分を認めてもらえたと感じることができ、自分に存在価値があると感じられるようになった」と、ニフティのフォーラムとの出会いが自己を変えるきっかけになったことを語った。

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