“狛犬”が導くOSSのこれから--Developers Summit 2006

田中好伸(編集部) 2006年02月13日 11時23分

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 開発者向けカンファレンス「Devlopers Summit 2006」が2月9〜10日に開催された。その中の「狛犬(Seasar2)の飼い方教えます。〜企業とオープンソースの生きる道〜」と題するセッションにおいて、企業がオープンソースソフトウェア(OSS)をビジネスに結びつけるうえでの問題などが説明された。

飯田哲夫氏

 セッションでは、電通国際情報サービス(ISID)で事業推進本部でマネージャを務める飯田哲夫氏とISIDの開発技術センターでシニアコンサルタントを務めるひがやすを氏。ひが氏は、OSSのJava開発用フレームワーク「Seasar2」のチーフコミッタも務めている。

 Seasar2は、アスペクト指向プログラミング機能を備えたDIコンテナであり、特定非営利活動法人のSeasarファウンデーションが中心となって開発している。日本で開発されたOSSとして注目されている。ISIDは2005年11月から、Seasar2の商用サポートを開始している。

ひがやすを氏

 また2005年12月には、Seasar2の関連ドキュメントの英語化が完了しており、世界を目指すOSSとしても注目を集めている。2006年5月に米で開催されるJavaの開発者向けイベント「JavaOne」で、ひが氏が講演することが決まっている。

 セッションの中で飯田氏は、OSSとビジネスとの関係についてさまざまな矛盾があると指摘している。OSSを利用することについて「ユーザーは迅速なサポートとパッチの提供、責任を持ったサポート主体を欲しがっている。それらがあれば、ユーザーは安心して大規模な案件にもSeasar2を使いたいとしている」(飯田氏)。しかし、その一方でユーザー側としては「特定ベンダーにロックインされたくない。特定ベンダーがSeasar2をコントロールするのではOSSの意味がない」(飯田氏)との考えを持っていると説明。

 飯田氏は、企業のOSSに対する見方も説明し、「OSSがソフトウェアの領域で一般的になっており、OSSを核にしたビジネスへの試行が始まっている」(飯田氏)ことなどから、企業としてもOSSをビジネスに活かしたいとしている。

 「しかし、OSSは企業のビジネスモデルを否定し、顧客の囲い込みもできず、また製品のコントロールもできない。つまり、OSSは収益モデルを描きにくく、経営陣の理解を得ることが難しい」(飯田氏)

 ひが氏は、企業に籍を置きながらOSSを開発することの難しさを実体験から、またSeasar2のチーフコミッタという立場から「仕事が終わった後や休日しか開発する時間が取れない。緊急に修正が必要だと思っても、その時間が確保できない」などの悩みがあったことを明かしている。

 「企業がオープンソース活動を仕事として認めてくれることは、基本的にはない。そのためにオープンソース活動をさせてくれることが企業にもメリットがあることを積極的にアピールする必要がある」(ひが氏)

 そこで、ひが氏は、OSSの開発者自らが知名度を上げれば、企業の知名度も上がり、企業が新入社員や中途社員を採りやすくなるというメリットを挙げる。さらにひが氏は「Seasar2というプロダクトを開発するにあたり、ユーザーの欲しい機能を開発することで、プロダクトの競争力を高めるようにした」とも説明している。プロダクトが有名になることで、企業の知名度も上げるように努力したという。このような努力の結果、ひが氏は「この4月から、仕事の時間の3分の1をOSS開発に使うことが許されるようになっている」(ひが氏)という。

 OSSとビジネスを巡る問題について、飯田氏は次のように整理する。

 「開発コミュニティとしては、ユーザー志向を維持しつつ、開発リソースを確保したい。企業としてはオープンソースとビジネスを両立させたい。ユーザーとしてはOSSを安心して使いたい」

 これらの問題を解決する方向性として飯田氏は、企業は「OSSとの新しい関係を築くことが重要」と説明して、以下の点を挙げる。

  • OSSを(顧客の)囲い込みの道具としない
  • コミュニティの発展に寄与する
  • ユーザーの視点に立つ
  • 企業としての境界線をあいまいにする
  • オープンなネットワークへの貢献を考える

 ここで飯田氏が説明する「企業としての境界線をあいまいにする」というのは、これまでのように企業の内側に開発リソースを抱え込み、ユーザーとも一線を引いてしまうというものではなく、開発リソースやユーザーの一部を企業の内側に入れてしまうことで、企業の境界線をあいまいにしてしまうという考えである。

 「つまり、従来型のソフトウェアビジネスのモデルでは駄目。オープンな環境だからこそ実現できるビジネスモデルへの転換が必要になっている」(飯田氏)

 その一例として、飯田氏はISIDのOSSに対するビジョンを説明。ISIDでは「オープンソースの積極開発を通じてソフトウェア開発の最適化を実現し、顧客ビジネスにイノベーションをもたらすことを目指す」としている。

 これらのビジョンを実現するものとして同社では、Seasarファウンデーションに対して(1)コミュニティへの貢献、(2)ユーザーへの貢献――という2つの点で実際の取り組みを始めている。

 (1)のコミュニティへの貢献では、開発リソースの提供、関連ドキュメントの英語化、マーケティングの支援を行っている。(2)のユーザーへの貢献では、サポートサービスの提供、サポートサービスを行うことでユーザーへの安心の提供などが挙げられる。

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