前回(BIの「I」は、CIAの「I」--企業のデータ活用と国家の諜報活動との意外な共通点)は、ビジネスインテリジェンス(BI)における「インテリジェンス」という言葉の意味について考えた。
インテリジェンスの本質は「判断、行動するために必要な知識」であり、そのインテリジェンスは、「インフォメーション」から生産されるということを理解した。インテリジェンスには大きく3つの種類があり、「ヒュミント(HUMINT、Human intelligence)」が人的情報源から得られるインテリジェンス、「シギント(SIGINT、Signals intelligence)」が信号情報の傍受から得られるインテリジェンス、「イミント(IMINT、Imagery intelligence)」が画像情報から得られるインテリジェンスである。
不確実性に挑む人間の洞察力
例えば、米国はイランの軍事的な活動について、偵察衛星が映し出す画像によって、ほぼリアルタイムにインフォメーションを収集することが可能だろう。ただし、リアルタイム(理想的な状態)の「カレントインフォメーション」を獲得できるからといって、相手の意図、さらには相手がどのような行動に出るかについては、実際にことが起こってみるまで誰にも分からない。どのようなテクノロジを駆使したとしても、この不確実性を克服することは困難だ。インテリジェンスの価値は、それを活用するカスタマーの洞察力にかかっている。
人はなぜインテリジェンスを必要とするのだろうか。何らかの判断や行動を起こすときに、その意味について考えるときの基準が必要だからだ。いろんな情報を集め、情報を整理して意思決定を行い、実際に実行に移す。これが人の意思決定のプロセスだ。
個人の意思決定に基づく個人の活動があるように、組織には組織の意思決定に基づく組織の活動が存在する。企業を例にとれば、「部」や「課」といったグループは、それぞれの目的を達成するための方法(作戦計画)を考えて活動する。さらに、組織全体としての目的を達成するための、より大きな作戦計画が存在し、各グループの作戦計画は、その作戦計画に基づいて立案されている。
以前、「戦略立案」をテーマにした特集の中(戦略だらけの世の中だけど−そもそも「戦略」って何だっけ?)でも触れたが、この組織全体の大局的な作戦計画のことを、一般に「戦略」と呼んでいる。