「BRMSはナレッジワーカーに革命をもたらす」とアイログのCEO

末岡洋子

2006-03-24 22:27

 ILOGは3月21日、フランス・パリにある同社の本社でプレスイベントを開催、Javaベースのビジネスルール管理システム(BRMS)製品の次期バージョン「ILOG JRules 6.0」の概要を説明した。最新版では、ビジネス担当者とIT担当者の作業環境を完全に分離し、「妥協のないBRMS」を実現する。そこで、ILOG JRules 6.0の最新版の機能、およびBRMSの現在について、ILOG担当者の説明を中心に紹介する。

BRMSとBPMでナレッジワーカーに産業革命を

 ILOGの創業にも関わった最高経営責任者(CEO)のPierre Haren氏は、BPM(ビジネスプロセス管理)とBRMSを、「ナレッジワーカーの産業革命を実現するもの」と言う。ナレッジワーカーの大きなタスクを細分化して自動化する“アセンブルライン”がBPMで、それを動かすエンジンにあたるものをBPRMと例えている。

ILOG CEOのPierre Haren氏。

 数年前より、世界的にITアウトソーシングのトレンドが指摘されているが、インターネットによりタスクレベルで簡単にアウトソーシングできるようになる。これにより、「これまでにない速度と規模でITシステム構築を実現する革命が起こるだろう」というのがHaren氏の理論だ。

 BPRMのメリットは、自動化だけではない。ビジネスルールを柔軟に作成、変更、管理できることは、柔軟なITシステムも実現する。実際、同社の顧客であるeBayは、信頼性のあるネットワークを実現するため、2000台のサーバをルールにのみ基づいて運行し、1日平均1000万件のトランザクションを処理している。

 もうひとつの重要なメリットが法規制遵守だ。ビジネスルールの監査も容易になることから、米国の企業改革法「Sarbanes-Oxley(SOX)法」などの規制や社内ポリシー遵守管理も容易になる。

ビジネスとITの完全分業を実現する最新版

 ビジネスルールは、「もし〜ならば、…をする」というような条件文を集めたものだ。通常、このようなビジネスルールは業務アプリケーションに組み込まれていることが多く、変更は容易ではなかった。ILOGの提唱するBRMSでは、ビジネスルールをアプリケーションとは切り離してリポジトリに格納するというアプローチをとる。これにより、ビジネス担当者はIT部門の手を借りることなくビジネスルールの作成や変更を容易に行えるようになる。

 ILOGは、1997年に初のJavaのルールエンジンとして「JRules 1.0」をリリースし、2000年にはビジネスユーザー向けにもツールを提供するバージョン4.0をリリースした。2003年にルールリポジトリを持つバージョン4.0をリリースして以降、BRMS実現を意識して製品改良を続けてきた。2005年にリリースしたバージョン5.0では、ビジネスルール実行/プロダクション環境を提供、2006年初めのバージョン5.1.2では、テストシミュレーションツールを導入している。

 ILOGが22日にリリースした最新版の「ILOG JRules 6.0」は、これらのすべてを統合するいわばBRPMの完全版。最新版は、ビジネス担当者がIT担当者の手を借りることなく、容易にビジネスルールを作成、変更、管理するウェブベースのツールである「Rule Care」、IT担当者向けのEclipseプラグインを持つ開発支援の「Rule Tech」と、ビジネス担当者とIT担当者がそれぞれの作業環境を持つ。

 ILOGのビジネスルール製品管理担当ディレクター、Colleen McClintock氏は、「これまでにないレベルで分離した」と述べる。複数のビジネスルールサイクルを同時に扱うことも可能だ。それだけでなく、Rule CoreとRule Techを協調させる「FullCircle BRM」では同期化機能を提供、ばらばらに作業してもルールの変更をきちんと同期できる。ILOGでは、このような同期化機能は業界初としており、最新版の最大の特長といえる。

 JRules 6.0のモジュールとしては、ビジネスルールの作成、変更などを行う「Rule Team Server」、ルールの実行をつかさどる「Rule Execution Server」、Java開発環境の「Rule Studio」、そしてルールのシュミレーションなどを行う「Rule Scenario Manager」の4つで構成される。

 ビジネスルールは複数のアプリケーションにまたがって実装されることが多く、矛盾があったり、一貫性を欠くものであってはならない。しかも、今日の企業は数多くのビジネスルールを持つ。そういったことから、4つ目のシュミレーションツールは重要となりそうだ。

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