成功するM&A教えます--vol.2:後悔したくないなら何より「綿密な調査」 - (page 2)

文:Geoffrey James
翻訳校正:ラテックス・インターナショナル

2007-11-20 12:00

比較表のサンプル

 以下に、GPSマッピングソフトウェアの分野で業界のリーダーになるという戦略を持つ企業を想定した簡略化された比較表の例を示す。

要件 企業A 企業B 企業C
現在の市場でシェアを51%に成長させる 12%を支配している 3%を支配している 18%を支配している
顧客サービス担当として15人の新しいエンジニアを獲得する 12人のプログラマーがいる。何人かは顧客サービス部門への異動を希望する可能性 この機能を外注している。契約は譲渡可能かもしれない 25人のサポートエンジニアがいるが場所はアラバマ州
民間航空機のGPSに拡大する この市場に参加していない この市場の24%を支配している この市場に参加していない
予測される購入価格が2億5000万ドル未満 2億1000万ドル 7200万ドル 1億5800万ドル
互換性のあるソフトウェア環境 ○(Windows) ×(Linux) 混合(WindowsとLinux)


デューデリジェンスを実施する

目的:候補企業が本当に自社の戦略的な目標に合っていることを確認する

 候補企業を絞り込んだら、ターゲット企業の経営陣と協議に入る前に、詳細な項目を検討する。つまり、デューデリジェンスである。たとえてみれば、ステロイドの実用化研究のようなプロセスである。以下に実行する必要のあるステップを説明する。調査で明らかになる数字を素早く分析するには、M&Aクイック分析ワークシート(翻訳記事は1月22日に公開の予定)を参照してほしい。

  1. 対象企業のプロフィールを作成する。インターネットで調査して対象企業の資料となる文書を集める。こうした資料には、最新ニュース、会議の議事録、ブログのエントリ、米証券取引委員会(SEC)の文書のほか、その企業、事業内容、人事に関して公に入手可能なあらゆる情報を含めるべきである。
  2. データを分析する。企業買収は複雑であるため、チーム全員の専門知識を利用しなければならない。適切な人材を早期に関与させればさせるほど、取引成功の可能性が高まる。ミドルマーケットのテクノロジ企業にサービスを提供する投資銀行のInnovation Advisorsでマネージングディレクターを務めるDoug Brockway氏は、「M&Aには非常に多くの異なる側面があるので、1つの視点だけに基づいて取引を進めてしまうのは極めて愚かな行為だ」と指摘する。法律顧問や金融の専門家に相談することに加えて、人事部に人員の再配置、給与体系の変更、レイオフについて尋ね、またIT部門には買収先企業のハードウェアとソフトウェアが自社のシステムに統合可能であるかを問い合わせる必要がある。
  3. 障害物を探す。交渉や実行の段階で問題になりそうなあらゆる要因を現時点で見つけておけば、あらかじめ将来の厄介の種を回避することにつながる。たとえば、財務報告では公表されていない訴訟がある場合は、原告に対して補償をする責任を背負い込むことになりかねないので大きな懸念の種である。同様に、対象企業の最高経営責任者(CEO)が会議で怒り出す傾向があるというブログのエントリがあれば、重役同士の何らかのトラブルに巻き込まれる可能性があることを示す警告である。
  4. 案件を進めるかどうか決断する。その企業が適切な相手であり、自社の傘下でうまくいくことを確認する。JM Cooper & Associatesの社長であり、Bristol-Myers SquibbおよびSeagramで最高情報責任者(CIO)を務めた経験もあるJack Cooper氏は、「その会社が自社にとってふさわしいかだけでなく、自社がその会社にとってふさわしいかどうかも重要だ」と指摘する。「企業買収を成功に導くには、買収した企業が実を結ばずに終わることなく合併後の成長も可能にする文化的、技術的な環境が自社に存在しなければならない」(Cooper氏)
  5. 自分自身に手を引く最後のチャンスを与える。企業の数値的なデータを押さえたら、次は自分自身の心の面をデューデリジェンスする番である。この企業を買収したいと思う本当の理由は何なのか。CEOとしての虚栄心(「XYZ社を買収した大物として名を馳せたい」など)または企業としてのうぬぼれ(「この市場を独占したい」)といった要因があるのではないか。この取引が自社の窮地を救ってくれる魔法の解決策であるというような、非現実的な期待を抱いていないか。失敗に終わるほとんどの企業買収の背後には、エゴや不安感に基づく動機が存在する。自分の場合もそうではないかと疑われる場合は、手を引くことを恐れてはならない。判断の間違いを修正するのに最も犠牲が少なくて済むのはこの段階である。

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