Notesを捨てたコクヨグループが目指す「IPスタイル」とは--企業のコラボレーション基盤を考える(10) - (page 3)

富永康信(ロビンソン)

2008-10-30 17:29

乗り越えねばならない3つのハードル

 Notes全面移行プロジェクトにおけるこれまでの成果を振り返りつつ、土山氏は「Notesは何でもできるツールであるがゆえに、移行においては乗り越えなければならない3つのハードルが存在した」と語る。

 1つはDB開発体制の問題だ。前述のとおり、コクヨでは、エンドユーザーによる現場でのDB開発は必須だった。そのため、Notes時代の反省を取り込みつつ、いかにEUD体制を整備するかが重要課題となった。

 新たな体制においては、Notes時代にエンドユーザー全員に与えていた開発権限を、各事業会社から選任の開発担当者(約400名)のみに限定し、開発担当者向けには基礎から応用までの徹底した教育を行った。EUDで利用できるのは「INSUITE標準ツール」と「Sm@rtDB」の範囲(Notesの開発能力を100とした場合、7割程度の低中レベルのDB範囲)である。残りの高レベルのDB範囲については、あえてエンドユーザーによる開発をさせないようにし、専門技術者向けツールを使ってコクヨビジネスサービスが委託開発することで、しっかりと設計書を残し、将来において担当者が替わっても対応できるようにした(図2)。

DBの開発体制をどうするか 図2:中小物DBについてはNotesで作り込み過ぎた機能をスリム化して移行し、大物DBは専門家に任せる体制に

 2つ目は、日常、最も利用されるメールの移行問題だ。Notesのメールはリッチテキストによる表現力の高さが現場でも評価されており、実際にその機能を利用しているユーザーも多かった。さらに、メールを個人が簡単にDB化できるというメリットも持っていたことから、シンプルな他のメーラーを使うことについては不満が多かったという。

 そこで、まずユーザーに対して改善要求ヒアリングを行い、ドリーム・アーツの協力を得てAjaxを駆使したウェブメールへの機能強化を図った。導入に当たっては、ユーザー向けテスト運用期間を半年間設け、講習会を計200回にわたって開催したという。合わせて、メールビューワの独自開発に取り組み、過去のメールのバックアップ機能や参照機能を実装。その後、3カ月をかけて段階的にリリースしていったという。

 3つ目は、既存DBの移行である。まず、当初3000近くあったDBを、内容を吟味しつつ、既に使われていないものや重複しているものをピックアップ。約半分の1600程度にまで削減した。その上で、残ったDBを「ワークフローが関与する業務アプリケーション系」「Notes独特のディスカッション系」「画像を含めた文書管理系」「掲示板系」の4種別に分類(図3)。その後、それらを対象に再度詳細な調査とヒアリングを実施することで、文書管理系や掲示板系の「中小物DB」、ワークフローや画面設計が必要な「大物DB」、与信管理や営業支援などの極めて複雑に開発された「超大物DB」に整理した。

 大物/超大物DBに関しては、NTTデータの「intra-mart」でJavaプラットフォームを共通化し、パーツも共有化しながら外部ベンダーに開発を委託するスタイルで移行させていった。その結果、移行が難しいとされた300個のDBを、約20個の大物DBと、数個の超大物DBに集約できたという。

既存DBの移行をどう進めるか 図3:Notes DBは最終的に3カテゴリーに分類・集約した

Notesをなくすことで生じる「新たな役割」と「継続すべき役割」

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