Windows Azureはどのような働きをするか--ユースケース別に考える - (page 3)

文:Phil Wainewright 翻訳校正:石橋啓一郎

2009-12-18 10:33

  • クラウド移行戦略の一部としての暫定的なホスティング。これは、いいことでも悪いことでもある。完全にクラウド化されたIT戦略に向けての暫定的なステップとして、サーバをクラウドに移すことは、おそらく多くの企業が社内資産をシャットダウンし、秩序正しい移行を行うための複雑な手順を容易にするためには必要なことだろう。しかし残念ながら、既存の社内アプリケーションを単純にクラウドに移行しさえすれば、クラウドコンピューティングの利点をフル活用できると考えている人が多いようだ。それは幻想であり、多くのISV(と企業)はAzureの罠にかかるだろう。
  • 社内資産を完全に置き換える、クラウドベースのサービスおよびアプリケーション。もちろんこれはクラウドの最終形であり、究極的にすべてのコンピューティングが到達するところだ。Azureはこのユースケースを実現できるプラットフォームとしての資格を持っているが、Azureには他のユースケース、特に社内およびシングルテナント型のコンピューティング資産を保持し続けるケースに対しても対応しなくてはならないという障害がある。Azureが、顧客が社内のコンピューティングインフラを使って出来ることに敵対するのではなく、それを補完することを主眼として進化し続ける限り、そのような二律背反的な動機に抑制されることのない他のクラウドプラットフォームとの競争では、不利な立場に置かれ続けるだろう。

 私がマルチテナント型のクラウドコンピューティングにこだわるのは何故か、疑問に思う人もいるだろう。この質問への答えは将来の記事で詳しく説明するつもりだが、その一部については私が最近行ったウェビナーで説明している(情報開示:AzureのライバルであるOpSourceがこのウェビナーのスポンサーになっている)。簡単にいえば、私はWindows Azureやそれに似たプラットフォームが、開発者をクラウドの全貌を知らないまま、生焼けの(半端にaaS化された)クラウドの実現に誘い込んでしまうのではないかと心配しているのだ。この記事で説明したユースケースの多くは、企業のIT資産をクラウドに拡張するものだが、Azureは単純に社内で展開されることを意図したソフトウェアやアプリケーションの代替プラットフォームとして使われているだけだ。これらのユースケースでは、それらの資産がリアルタイムの、帯域を豊富に持った、共有APIを持つクラウド環境をフル活用しているとは言えない。危険だと思っているのは、Windows Azureがクラウドコンピューティングの完全な恩恵を実現する手段とはならずに、アプリケーションを若返らせるのではなく、単にアプリケーションが老後を快適に過せるようにするためだけの一種の療養所のようになってしまうのではないかということだ。

この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。原文へ

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