海外コメンタリー

水泡に帰した数十億ドル--米小売大手Targetのカナダ撤退を招いた劣悪なシステム - (page 3)

David Gewirtz CBS Interactive Staff 翻訳校正: 編集部

2016-02-29 06:00

 具体的に言うと、従業員を採用して訓練し、流通センターを建設して体制を整え、128店舗を改装し、納入業者との取引関係を確立し、新市場カナダでの需要を創出し、大規模なサプライチェーン管理システムを開発およびカスタマイズし、データベースに新規レコードを追加し、128店舗に在庫を補充するという気の遠くなるような作業すべてを、2年以内に完了させる必要に迫られたのだ。

破滅に至る負の連鎖

 Targetはカナダ国内で、Amazonのフルフィルメントセンターに匹敵する規模の大規模配送センター3カ所を新たに建設した。小売業界のサプライチェーンにおいて配送センターは、数千の業者から納品される多種多様な商品を一時保管して整理し、各店舗に発送するという重要な役割を担っている。

 配送センターは、サプライチェーンにおける配電盤または交換台のような存在だ。通常、配送センターは商品を長期的には保管しない。サプライチェーンを生物に例えると、配送センターは心臓のようなものだ。国内外から流れ込んだ商品という名の血液は、直ちに各店舗に向けて送り出され、その流れは一瞬たりとも止まることはない。

 しかし、Target Canadaの在庫管理は破綻した。当初、配送センターには異常に少ない数の商品しか納品されなかった。結果として、各店舗では多くの棚が空のままとなった。最初に開店した大型店舗を訪れたカナダの消費者は、棚に商品がほとんど並んでいない、ゴーストタウンのように不毛で広大な店内を目の当たりにした。それはまるで、「Fallout 3」(核戦争後の荒廃した世界を舞台にしたゲーム)に登場するスーパーマーケットの廃墟が具現化したような光景だった。

 しかしその後、配送センターには一転して許容量を超える膨大な数の商品が殺到する。Targetが苦心して確保した商品群が、配送センターに一斉に到着したのだ。しかし、前述したメートル法とヤード・ポンド法の違いが原因で、システムが商品の配置を正しく計算できず、配送センター内に整理できない商品があふれかえった。Target Canadaの経営陣は苦肉の策として、さばききれない商品を付近の倉庫に分散させて保管した。

 その結果、配送センターでは商品があふれかえる一方で、各店舗に商品が行き渡らないという悪循環が発生した。

 ちなみにTargetは、米国内では極めて効率的なサプライチェーンと情報システムを運用している企業だ。しかし、前述したようなシステムの国際化という難事業に直面した同社は、新市場への参入に際して、既存システムのカナダ対応は行わないという決断を下していた。代わりに同社は、外部のサプライヤーを下請業者やコンサルタントと共に誘致し、全く新しい枠組みを一から構築することにしていた。

 この決定が原因で壮大な破綻劇が幕を開けるのだが、中でも特筆すべきトラブルを2つ紹介しよう。

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