セキュリティ人材が不足--「攻撃者を追い詰める“ハンター”が必要」RSAトップ - (page 2)

鈴木恭子

2016-03-03 16:35

「FBIは地獄の釜のふたを開けろと言ってるのか」Microsoft幹部

 国家は暗号化を弱体化させるような、見当違いの政策を打ち出すべきではない――。

 基調講演内で直接の言及は避けたものの、Yoran氏は、米連邦捜査局(FBI)が銃乱射事件の犯人が所有していたiPhoneのロック解除をAppleに要求している件について、「IT業界を弱体させる要求」だと批判した。

Apple支持の姿勢を明確にしたMicrosoft プレジデント兼最高法務責任者 Brad Smith氏
Apple支持の姿勢を明確にしたMicrosoft プレジデント兼最高法務責任者 Brad Smith氏

 この問題について、さらに一歩踏み込んだ発言をしたのが、Microsoftプレジデントで最高法務責任者のBrad Smith氏だ。Yoran氏に続いて基調講演に登壇したSmith氏は、ロック解除を拒否しているApple支持の姿勢を鮮明にし、「(FBIが要求している)バックドアを開けることは、地獄の釜のふたを開けることだ」と痛烈に批判した。

 同氏は、暗号化技術を「代替がきかない優れた技術」であるとし、「企業は、(そうした技術の実装で)ユーザーのプライバシーとセキュリティを守っている。今回のFBIの要求は受け入れがたい」と述べた。本件については主要IT企業がAppleの支持の姿勢を表明している。

 「国家が(企業や組織の)情報を調査をしたい場合には、直接相手(企業や組織)を調査すべきだ。その企業が利用しているクラウドベンダーに情報開示を迫るべきではない」(Smith氏)

 問題なのは法律に則った要求ではないことがあるというのが、Microsoftのスタンスだ。Smith氏は2015年11月に発生したフランスのテロ事件を挙げ、「テロの後、Microsoftはベルギー当局から14の合法的な情報開示要求を受けた。その際には(依頼から)30分以内にすべての要求に応えた」と紹介し、国家が正当な法的根拠を示す場合には積極的に情報提供に協力する姿勢を強調した。

 同氏は法律が技術の進歩に追いついていないにもかかわらず、法律を改定しなかったことに問題があると指摘。こうしたギャップが今回の問題を引き起こした一因であるとの見解を示した。

Intel Security シニアバイスプレジデント兼ゼネラルマネージャー Christopher Young氏
Intel Security シニアバイスプレジデント兼ゼネラルマネージャー Christopher Young氏

 IT業界が取り組むべき課題として「脅威情報と対応するインテリジェンスの共有」と「人材不足の解消」を挙げたのは、Intel Security(旧McAfee)でシニアバイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーを務めるChristopher Young氏だ。

 同社は、サイバー脅威アライアンス(Cyber Threat Alliance:CTA)の創業メンバーであり、かねてから脅威情報を共有する必要性を訴えている。Young氏は、「セキュリティベンダーが脅威情報とインテリジェンスを共有することで、セキュリティ人材不足に起因する被害防止の底上げができる」と主張する。

 Yoran氏と同様、Young氏もセキュリティ人材の育成には国や教育機関の関与が欠かせないとし、「若い人材を育てることは、セキュリティ業界だけの課題ではない」との見解を示した。

CTA加盟ベンダーを紹介するYoung氏。「さらに多くの企業が興味を持っている」と強調するが、「どこまで情報を共有するか明確になっていない」と静観する企業も少なくない
CTA加盟ベンダーを紹介するYoung氏。「さらに多くの企業が興味を持っている」と強調するが、「どこまで情報を共有するか明確になっていない」と静観する企業も少なくない

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