AI開発に実用される量子コンピュータ--人工知能研究を加速 - (page 2)

大関真之

2016-12-21 07:00

 通常のコンピュータでは、この手の「最適な解答」を求める場合には、「どうやって解くか」というアルゴリズムの作成からプログラムの入力まで人間が介入する必要があった。しかし、このD-Wave Systems社が製作したマシンでは、そのアルゴリズムの作成もプログラムの入力も不要である。

 すべて「組み合わせ最適化問題」を量子力学、つまり物理の理論を利用して解くための汎用的な解法「量子アニーリング」で包括的にそれらの面倒な問題を解決している。非常に優れた汎用的性能を持ったコンピュータである。人間が担う必要があるのは、「どのような問題を解くか」という問題設定の部分である。何がしたいのか、が明確な業種での導入は比較的容易である。実際に北米を中心にD-Waveマシンを購入する顧客も増えており、時間貸し契約に基づくエンドユーザーが増加中だ。

 日本でも後を追って、最適な解答を探し求める専用ハードウェアやチップの開発が進んでいる。日本人だからといって、その完成を待つ必要はなく、どのような問題を解くべきか、解いたらどんな利益を生み出すことができるのか、その点について考えておかないと日本では時代遅れの企業やサービスしかなくなってしまうかもしれない。

 さて、このD-Waveマシンについて気になる情報がある。最適な解答を見つけ出すために作られたマシンであるが、多くのユーザーが魅力を感じてD-Waveマシンを利用している理由は実は「機械学習」での応用だ。最適な解答を出すためのマシンが機械学習に利用できるというのはどういうことだろうか。

 この5月にD-Waveの役員やエンジニアたちが来日して彼らのサービスやテクノロジについての説明があった。その際にD-Waveマシンのデモンストレーションが行われたのだ。D-Waveマシンの利用時には、解きたい問題をウェブブラウザ上で入力して、そのままその情報をマシンに伝送する。メールを送る感覚だ。そのあと瞬時に何度も同様な計算を繰り返して、その結果出てきた計算結果を返してくる(youtubeのデモ映像)。

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