設計データをアップセルの“ネタ”に
基調講演では、ドイツBosch Rexrothが最先端事例企業として登壇。同社が製造する油圧装置「CytroPac」の、設計開発から製造、販売に至るまでのプロセスが、デモンストレーション形式で紹介された。最初の設計/開発部門では、要件定義を確定させる。具体的には、エネルギー効率を向上させると同時に冷却部品の構造を変更し、サイズ変更することなく軽量化を図るというものだ。
スマートコネクテッドプロダクトである「CytroPac」は、従来の製品とは設計のポイントが異なる。デモでは「Creo」で冷却部品の水流をシミュレーションし、熱解析と構造解析を実施する様子が披露された。
次のデジタル部門では、設計/開発部門が生成したデータを、営業活動に活かすことがミッションとなる。具体的には、機械学習などで「CytroPac」を利用している顧客データを分析し、顧客が利用しやすいようにデジタルマニュアルを作成したり、ThingWorxで顧客の利用環境を考慮したアプリを開発したりする。
Bosch Rexrothの担当者は、「(データ活用による)顧客ベースのサービスが提供できれば、『クロスセル』や『アップセル』も期待できる。こうした施策は、ThingWorxの導入で約10倍の効率化を達成できた。“ローレベル”のインフラ構築の労力を割く必要はない」とその効果を語る。
デジタル部門のデモではARを活用して製品情報を提示する様子が披露された(物理的にあるのは、左側の白い物体だけだ)
さらに販売/マーケティング部門では、顧客がCytroPacから得られる稼働状況データを活用し、故障や異分野間接続による障害を予兆したり、データから得られる知見を基にビジネスの効率化を図れるように支援する。
Heppelmann氏は、「IoTの取り組みで、ビジネスの世界が変わる。IoTとCAD PLMの連携は、製造業デジタル改革の第一歩だ。今、語っていることを10年後に振り返った時、皆さんは“あのとき時代が動いた”と気がつくだろう」と聴衆に語りかけた。
ThingWorx Studio(旧Vuforia)で作成したARコンテンツはマイクロソフトの「HoloLens」で見ることが可能だ