製品ライフサイクル管理(PLM)ソフトウェアを手掛けるPTCジャパンは2月17日、“モノのインターネット(Internet of Things:IoT)”戦略に関する記者説明会を開催した。
同社は2013年12月30日、IoT向けアプリケーション開発運用プラットフォームを提供する米ThingWorxを約1億1200万ドルで買収すると発表している。今回の会見には、米PTCの社長兼最高経営責任者(CEO)であるJames Heppelmann氏と、ThingWorxの共同創業者兼CEOであり、現在ThingWorx PTCビジネスでプレジデント兼ゼネラルマネージャーを務めるRussell Fadel氏が登壇し、ThingWorx買収の目的と今後の製品戦略について語った。
米PTC 社長兼CEO James Heppelmann氏
米ThingWorx PTCビジネス プレジデント兼ゼネラルマネージャー Russell Fadel氏
IoTは、コンピュータやスマートフォンといった情報通信機器だけではなく、端末や建物、自動車、家電といった“モノ”に通信端末を組み込み、相互接続することで生み出される新たな価値やサービスを指す。
IoT市場は急速に拡大しており、McKinsey Global Instituteが2013年5月に発行した調査報告書によると、IoTによる経済効果が2025年までに年2兆7000億~6兆2000億ドルに達する可能性があるという。2025年までに製造業の80~100%がIoTアプリケーションを利用するとし、その経済効果は9000億~2兆4000億ドルになると推測している。
Heppelmann氏は製造業を取り巻く環境の変化について、「製造業の枠組みが大きく変化している。製品のスマート化や相互接続化が進み、さまざまなデータ収集が可能になった。そのような状況下では、顧客の“製品”に対する期待も変化している」と指摘。製品がもたらす価値が「モノ(物体)」から「サービス(製品を使用して得られるユーザー体験)」にシフトしているとした上で「今後、製造業では製品を通じたサービスの提供(製品のサービス化)が、大きなビジネスチャンスになる。その中でIoTは大きな役割を担う」と訴えた。
製品のサービス化で重要なのは、製品を通じて収集したデータの最適化である。例えば自動車の走行データを取得しても、設計部門とサービス部門、さらに保険会社では必要な可視化データが異なる。ThingWorxはこうしたデータをもとにビジネスロジックを構築し、最適なアプリケーションを開発するプラットフォームを提供している。
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Fadel氏は、「ThingWorxはオープンなプラットフォームであり、顧客は独自の要件に基づいてアプリケーションをすばやく開発できる。モデルベース開発を実現したことで、企業は一般的な開発と比較し、時間とコストを最大10分の1に抑えられる」と自社の技術力の高さを強調した。
今回の買収によりThingWorx製品は、PTCのサービスライフサイクル管理(SLM)やPLMなどのポートフォリオを補完する形で組み込まれる。ThingWorxの開発チームは、同社が提供する予知保全や状態監視機能を活用した新たなIoTアプリケーションの開発も担当する。ThingWorxはブランド名を変更せず、単体製品としても継続して提供されるという。
Heppelmann氏は、ThingWorxの位置付けについて「環境や農業など現在PTCが参入していない分野については(ThingWorxが)独自にビジネスを進めていく。PTCは製造業に特化しているが、ThingWorxは幅広い領域で活用されている。組織的にはPTCの子会社として運営される形だ」と語った。