製品ライフサイクル管理(PLM)ソフトウェアを手掛ける米PTCは、6月15~18日に米国マサチューセッツ州ボストンで同社のユーザー向けコンファレンス「PTC Live Global 2014」を開催。2015年で30周年を迎える同社が強調したのは「製造業におけるビジネスモデルの抜本的変革」だ。
3Dプリンタの10倍規模というIoT市場
今、製造業はビジネスモデルの戦略的転換を求められている。単に「モノ(製品)を売って利益を得る」モデルから「モノがもたらすサービスを提供する」モデルへのシフトだ。IoT(Internet of Things:モノのインターネット)の普及で、その潮流は加速するだろう――。そう語るのは、米PTCで社長兼最高経営責任者(CEO)を務めるJames E. Heppelmann氏だ。
米PTCで社長兼CEOを務めるJames E. Heppelmann氏
同氏は、建物や自動車、家電といった“モノ”が通信機能を有し、常にネットワークに接続している「スマートコネクテッドプロダクト」となることで、製品のバリューチェーン(価値連鎖)の変革が起こると指摘する。
現在、IoT市場は急速に拡大している。IT専門の調査会社であるIDCは、同市場が2013年の1兆9000億ドルから、2020年には7兆1000億ドルに拡大すると予測している。コンサルティング企業のMcKinsey Global Instituteは、IoTの経済効果が2025年までに6兆2000億ドル程度に達すると予測している。この数字は、クラウドコンピューティングの経済効果よりも大きい。
さらに複数の調査機関が、2020年にはインターネットに接続するデバイス数が500億台に達するとの見方を示している。その多くは、PCやモバイルデバイスでなく、自動車や製造機器、医療機器、農業分野のセンサであるという。
Heppelmann氏は「市場が急速に発達する理由は、そこに価値があるからだ。その経済効果も計り知れない。IoTの経済効果は、3Dプリンタの10倍に達すると言われている」と同市場の成長性を強調する。
モノが「スマートコネクテッドプロダクト」となることで、製造業のビジネスモデルは変革を迫られるとHeppelmann氏は語る
考慮すべき3つのポイント
多くの企業がIoT市場でイニシアチブを取るべく、さまざまな“IoT対応製品”をリリースしている。エンタープライズからコンシューマーまで、「IoT」はバズワードといっても過言ではない。こうした状況についてHeppelmann氏は、「IoTは誤解されていることが多い」と指摘する。
「IoTでは、ネットワークや(バックグラウンドである)クラウドといったインターネットに注目しがちだが、モノがなければ、IoTは価値を生み出さない。重要なのは、スマートコネクテッドプロダクトがどのような価値を生み出すかだ」(Heppelmann氏)
また同氏は、「スマートコネクテッドプロダクトで、製品を生み出す外的な要素が、既存の要素からシフトしている」と語る。例えば、製品を同じ機能を提供する場合でも、「ハードウェアかソフトウェアか」「組み込みかクラウドか」「製品かサービスか」といった選択肢があるという。
音楽を例に挙げると、今まではオーディオデッキとCDといったハードを提供していた。しかし、「音楽を提供する」といった観点で考えれば、現在は、ソフトウェアとクラウドでも提供できる。同様に、特定機能を製品内に組み込み式で提供すべきか、(クラウドからの)外部機能として提供する方がよいのかといった選択肢がある。これらはどちらが正しいという正解はないというのだ。
中でも注目すべきは、「製品かサービスか」の選択だろう。近年同社は、顧客の製品に対する要求が「その製品を使用して得られる利便性とユーザー体験」にシフトしていると述べている。その好例としてHeppelmann氏は、米国ワシントンDCがオランダPhilipsと契約した公共駐車場照明の例を紹介した。