バイモーダルITの人材育成
足立氏は、既存IT技術者を生かす上で、2つのモードを手掛けるバイモーダルの人材育成を助言する。既存システムの改善や運用などを担うモード1の人材育成のカギは再活性化にある。計画の着実な実行を通じてゴールを目指すモード1に、目立つ場面を作る。社内システムの守り神、業務の自動化を提案するといった明確な役割をもたせる。APIの導入などによるデジタルとの連携にも取り組んでもらう。専門性を高めるエキスパート制を導入し、社内システムを守っているという尊厳を確保する。管理職に向かない技術者を救済する狙いもある。
一方、モード2の人材育成のカギは、発掘にある。さまざまなアプローチを試しながらゴールを目指すモード2は、多様な経験と知識が求められる。その人材発掘には、日常の意識や振る舞いを観察すること。SNSなどから、どんな発言をしているか観察もする。周囲とのコミュニケーションも注意深いみる。既存分野での評価にこだわらない。意外に、年配社員に隠れた候補がいるという。
ITリーダーらは人材育成に取り組むため、採用や育成、評価、キャリパス設計に関与する。そのためには、ITリーダーが人事部と協力関係を築き、人事ローテーションなどを採り入れる。IT部門の技術者をビジネス部門に2年、3年出向させる。ビジネス現場を知るためだ。逆に、ビジネス部門の人材をIT部門に異動させる。IT部門の理解を深めてもらうためだ。フリーランスやIT企業の退職者など高スキルなIT技術者を取り込んだ仮想組織を設置し、デジタル・プロジェクトを加速させる。
こうしたIT組織作りと人材育成に乗り出すIT部門に、IT企業は従来とは異なる提案を求められることになるのだろう。