統合というものは、今日の最高情報責任者(CIO)が直面している最大級の課題であり、機会でもある。適切な統合を実現できれば、世界で最も長い歴史を持つ、そして最も大きな企業であっても、機動性に優れた新興企業のようにイノベーションを達成できる。これに対して、適切な統合に失敗すれば、大きな打撃を伴う長い停滞期への道を歩むことになる。統合戦略は今日、企業を成功にも、そして破滅にも導く重要な要素なのだ。
MuleSoftの依頼を受けてVanson Bourneが企業のITリーダーを対象に実施した調査によると、ほとんどの企業(97%)がビッグデータのアナリティクスや、IoT、人工知能(AI)といったテクノロジーによるデジタル変革のイニシアティブを推進している、あるいは計画しているという。その一方、企業は従来型の断片化された運用形態の克服に依然として苦労している。
また回答者の92%は統合について、IT部門にとどまらず、業務アナリストからデータサイエンス、人事、マーケティングに至るまでの幅広い業務分野を対象にする必要があると述べている。
企業のITリーダーの92%は、IT部門にとどまらない統合が必要だと答えている。
「2019 Connectivity benchmark report」(接続性ベンチマークレポート2019)と題された、MuleSoftとSalesforceによって公開されたレポートには、ITサポートの必要性が高まるなかで、企業が業務上の顕著な成果を達成するためにAPIのさらなる活用に迫られているという注目すべき内容も記されている。
パブリックなAPIおよび/あるいはプライベートなAPIを有している企業の91%は、そのメリットとして生産性の向上や運用コストの削減などを挙げている。回答者の36%は、売上高の25%以上がAPIによって生み出されているとしている。再利用可能なAPI資産を作り上げることで、IT部門は自らのプロセスの効率向上にとどまらず、全体的な調達スピードと業務能力の引き上げが可能になる。
筆者は最近、MuleSoftの創業者であり、統合の専門家でもあるRoss Mason氏と話す機会を得た。同氏は、システムとアプリケーションを接続し、連携させることは容易であってしかるべきだという理念の下で2006年にMuleSoftを立ち上げた。(現在はSalesforceの傘下にある)同社のミッションは、世界のアプリケーションやデータ、デバイスの接続を容易にすることで、組織による変革やイノベーションの迅速化を支援するというものだ。同氏はMuleSoftを創業する前に、膨大な数のシステムを接続する作業を欧州の複数の投資銀行で実施した経験があり、その際にあらゆるものがあまりにも複雑であり、制限を抱えている状況に衝撃を受けたのだという。その時の経験がMuleSoftの創業につながったというわけだ。
MuleSoftの創業者であるRoss Mason氏
筆者はRoss氏との対話から、ITを取り巻く状況が過去10年でいかに変化したのかや、APIの戦略的価値、AIやオープンバンキング、あらゆるものがサービスとなる時代において業務変革の推進を目指すCIOに対する助言など、さまざまな洞察を得た。以下に同氏とのやり取りを紹介する。