ガートナー ジャパンは、3月12~13日に「エンタプライズ・アプリケーション戦略 & アプリケーション・アーキテクチャ サミット 2019」を都内で開催した。初日の基調講演には日本瓦斯(ニチガス)代表取締役社長の和田眞治氏が登壇し、基幹システムをフルクラウド型に刷新した経緯とシステム変革のポイントについて語った。
日本瓦斯 代表取締役社長の和田眞治氏
「デジタル変革(DX)を避けることはできない」――和田氏はこう指摘する。企業が生き残るためには、古いレガシーシステムを捨てる勇気が極めて重要になる。「リスクを採った者だけがイノベーション創出のスタートラインにつける」(和田氏)
同社は、2000年前後に基幹システムを改修すべく、準備を開始した。当時はエネルギー自由化の流れから、現場の業務が煩雑化していた。処理のリアルタイム化も求められていた。こうして2008年頃に、基幹システムをフルクラウド型に刷新するプロジェクトに着手した。
刷新したシステムの特徴は、機能の単位で分割し、これを組み合わせてシステムを実現するマイクロサービスのアーキテクチャを採用したことだ。集約したデータもAPIを介して公開し、複数のアプリケーションから活用できるようにしている。
システムのPaaS化にも取り組んでいる。ニチガスのデータやシステム機能を組み入れたアプリケーションを外部の企業が簡単に開発できるようにする。これにより、エコシステムを形成できる。
データのリアルタイム処理で経営を迅速化、現場業務はスマホで完結
構築したシステムのメリットは、約150万世帯のデータをリアルタイムに処理できること。分析レポートを自動生成し、経営判断を迅速化した。「レポートを即座に自動で作ってくれるので、会議の回数が格段に減った」(和田氏)
業務端末のスマートフォン化も図った。現在では、スマートフォンで全ての業務を遂行できるという。携帯電話のBREW(かつてQualcommが提供していた携帯電話向けソフトウェア実行環境)ベースで動かしていたアプリケーションをAndroidスマートフォンに移行した。専用のハンディターミナルとも決別。現地でのガスなどの検針、保安、配送などの業務はスマートフォンで完結できる。入力ミスも自動でチェックする。デスクトップ業務の90%は現場で完結する。「デスクトップは、結果を閲覧するだけ」(和田氏)
例えば保安調査は、ガスメーターに付いているQRコードを現場でスマートフォンに読み込ませるだけで遂行できる。担当者が事前に準備する必要はなく、スマートフォンの指示に従うだけで業務が完了する。また、LPガスの配送業務も、どの重さの容器を何本積み込むかを自動で指示するほか、配送先の場所はカーナビと連携して指示する。