アマゾン ウェブ サービス ジャパンは5月30日より4日間、都内で「AWS Summit Tokyo」を開催している。クラウドの利用が珍しくなくなる中、31日の基調講演に登壇した同社代表取締役社長の長崎忠雄氏は顧客を交えながら普及を強調するとともに、「AWS Aurora」「AWS Snowball」などの新サービスを紹介し、パブリッククラウド事業者との戦いの中で先駆者として革新を続けていることをアピールした。
ここではAWSの現状と顧客の話を中心にまとめる。
最速で1兆円規模に達したAWS
AWS SummitはAmazon Web Services(AWS)が世界20拠点で展開するツアー。今年、日本での登録者は2万人以上。世界最大規模となった。会期を一日増やして4日とし、ブレークアウトセッションも1.5倍の150に、スポンサーブースも倍に増やした。満員の聴衆を前に長崎氏は、「日本においてクラウドへのシフトが起こっている」証拠とする。
アマゾン ウェブ サービス ジャパン代表取締役社長の長崎忠雄氏
AWSの売り上げは前年度比50%増の133億ドル(約1兆4600億円)に達している。「IT企業で1兆円の大台に最速で到達した」と長崎氏は胸を張る。「高速にイノベーションをし、顧客に採用してもらっているから」と理由を分析した。
利用している企業は、規模、業種ともに様々で、AWSもそれぞれに合わせたサービスやプログラムを用意している。中でもスタートアップに対しては、年間約1100万円分を無料で提供するという「AWS Activate」、Amazonが2017年1月に開始したハードウェアスタートアップの商材を販売するローンチパットプログラム「One Amazon」などを紹介した。
長崎氏は続けて、パートナーエコシステムにも触れた。APNコンサルティングパートナーでは、最上位の「プレミア」に日本から7社が選ばれているという。AWSで稼働するサービスを提供またはSaaSプラットフォームとしてAWSを使うISV向けには、APNアドバンスドテクノロジーというプログラムを用意している。
ここでの最新の取り組みが、「AWSコンピテンシープログラム」におけるワークロード向けの展開だ。SAP、Oracle、Microsoft Exchangeなど16分野のワークロードについて専門知識や実績のある専門家をリストするもので、クラウド移行に当たっての障害をまた1つ削除した格好だ。分野は今後も増やしていくという。
クラウドのメリットはITだけではないーービジネスもメリットを得られる
クラウド導入はなぜ加速しているのか? それはクラウドのメリットにそのままつながるものだが、長崎氏は1)コスト(初期費用ゼロ)、2)継続的な値下げ、3)サイジングからの解放と3つをあげる。これらはITのメリットだが、1)商機を逃さない俊敏性、2)最先端の技術の利用、3)グローバル展開やビジネスの拡張、とビジネスのメリットになる。
AWSジャパンでは日本での受け入れを加速すべく、日本準拠法を選択できるようにしたほか、通貨の対応を12種類に拡大、日本円での請求が可能になった。さらには、完全に日本語化されていなかったサービスコンソールを6月末までに100%日本語化するという。
「クラウドの登場により、ビジネスとITがより密に結合するようになった」と長崎氏。一方で、スタートアップでない限り、何らかのレガシーを持っていることになる。ITのモダン化(=ITトランスフォーメーション)が必要となるが、「米国など先行しているところでは、クラウドを使ってITトランスフォーメーションとデジタルトランスフォーメーションを加速させている。日本でもこの流れが間違いなくやってくる」と長崎氏。
その一社が三菱UFJフィナンシャル・グループだ。ゲストスピーカーとして登壇した同執行役専務グループCIO(最高情報責任者)の村林聡氏は、自社のITトランスフォーメーションの取り組みを語った。