EMCは多数の企業買収を行ったベンダーだ。同社は買収後、戦略的に重要なものについてはフェデレーションとして運営するモデルをとっていた。VMware、Pivotal、Virtustream、RSA Securityなどがその例だ。そのEMCがDellに買収された現在、Dell Technologiesはフェデレーションから、より近く深く連携する関係にすることで、競争力を加速する方向を進めている。
Dell Technologiesの傘下となったDell EMCが5月10日まで米ラスベガスで開催した「Dell EMC World」で、VMwareはDell EMCをはじめ、PivotalなどDell Technologies企業との統合ソリューションをいくつか発表した。発表を行ったのは、VMwareの最高経営責任者(CEO)、Pat Gelsinger氏だ。全体の基調講演の一部として、クライアント事業Dellに続いてスピーチを行ない、戦略や最新のソリューションを発表した。
VMwareの最高経営責任者(CEO)、Pat Gelsinger氏
IoT管理ファミリ「Pulse」を発表
最初に発表したのは、「VMware Pulse IoT Center」だ。AirWatch、vRealize Operations、NSXなどの同社の技術を組み合わせ、エンタープライズレベルのセキュリティと管理を実現するという。「エンドツーエンドのインフラ管理ソリューション。OTとITが連携してのIoTネットワーク管理を支援する」とGelsinger氏。
なお同製品は、VMwareが今後展開するIoTアーキテクチャの構築を支援する製品ファミリの最初の製品となる。今後はゲートウェイ、インフラ、クラウドなどに拡大し、ソフトウェア定義データセンター(SDDC)を利用して機能を拡充する。Gelsinger氏は先に発表した富士通との自動車業界向けIoTでの提携に触れ、「VMwareは退屈なインフラ、セキュリティ、管理を受け持つ」と自社の役割を説明した。
VMwareが発表したIoT管理製品ファミリ「Pulse」。Pulse IoT Centerは初の製品となる。
Gelsinger氏はまた、コンピュータの歴史からIoTを次のように位置づける。「コンピュータの歴史は集中と分散を繰り返してきた。クラウドで集中化に向かった後、IoTで分散化の方向に向かう」ーーだからこそ「VMwareはハイブリッドアプローチにフォーカスしてきた」と説明した。
「パワーがエッジに移動しており、エッジを制御できなければならない。Dell Technologiesは新しい時代のニーズを満たすプラットフォームとソリューションを構築する」とDell Technologies全体の戦略における位置づけを語った。
サーバ仮想化でスタートし、ソフトウェア定義データセンターへと拡大してきた同社にとって、IoTは3つ目の成長ステップとなる。「我々が積み重ねてきたこと、(顧客やパートナーの)あなた方が積み重ねてきたことを土台に、将来できることを広げていくことができる」(Gelsinger氏)。
VMwareはサーバ仮想化、SDDC(ソフトウェア定義データセンター)と戦略を変化させ、現在は「モバイル-クラウドのリーダー」を目指す
AirWatch、Workspace ONEでDell Technologiesとの統合を強化
次に、Gelsinger氏はVMwareのビジョンである”Any Cloud、Any Application、Any Device”を強化するための、Dell Techonologiesグループ企業との協業を紹介した。
VMwareの戦略は、Any Cloud、Any Application、Any Deviceだ。
Any Deviceは、「Workspace ONE」(任意のデバイス上のアプリの配信・管理ができるワークスペースプラットフォーム)、「AirWatch」(アプリやコンテンツなどを管理できるエンタープライズモビリティ管理)などの製品があり、Dell Techonogies全体が進めるWorkforce Transformation(ワークフォース・トランスフォーメーション)でも重要となる。ここではいくつかの統合を披露した。
1つ目として、AirWatchと「Dell Client Command Suite」との統合により、「AirWatch Unified Endpoint Management」でDellの一部ハードウェアを管理対象にできるようになったことを発表した。
2つ目として、「Dell EMC VDI Complete Solutions」を発表した。Dell Techonologiesと共同でDellのクライアント、VDIソリューション、ハードウェアとソフトウェアコンポーネント、それに「VMware Horizon」を組み合わせるもので、エンドツーエンドでデスクトップとアプリケーションの完全な管理が可能になるという。特徴は、「iTunesのような体験とエンタープライズ級のセキュリティ」だ。
VDI Completeはハイパーコンバージドの「VxRail」技術を統合することで、「ハイパーコンバージドソリューションとエンドポイントとを結びつける」と位置付ける。「3年前のEMC Worldで、全てのインフラがハイパーコンバージドになるという大胆な予測を発表した。各コンポーネント単位で見たハードウェア市場は成長していないが、ハイパーコンバージド市場は成長している。我々は統合されたハイパーコンバージドソリューションのリーダーになる」とGelsinger氏は述べる。
VMwareはこの他、会期中に発表された第14世代の「PowerEdge」についても、vSphere、VSANなどのソフトウェアで活用していくとした。「データ重複排除を犠牲にすることなく全ての暗号化ができる。しかも速度は50%高速になる」とGelsinger氏は14Gのもたらすパワーに期待を寄せた。
第14世代の「PowerEdge」