Microsoftが6月4日に発表したGitHub買収が、世界のデベロッパー界隈を揺さぶった。IBMは、ソフトウェア開発をめぐるこうした動きをどうとらえているのか。IBMでCDO(Chief Digital Officer)を務めるBob Lord氏に話を聞いた。
IBMはオープンソースに昔から注力してきている。GitHubにも、コントリビューターの1社としてIBM自身が数千に上るリポジトリを持っている。今後も投資と参加を続ける。
IBMでCDO(Chief Digital Officer)を務めるBob Lord氏
Microsoftは、今後もGitHubにおける選択の自由やGitHub経由で他のクラウドプロバイダーにアクセスできるようにすると表明している。オープンガバナンスの規律が守られている限り、われわれはGitHubの今後の存続を望んでいる。
1つ強調したいのは、大事なのはコードであって、それがどこに存在しているかではないということだ。この20年以上、われわれはオープンソースコミュニティーのパワーを見てきた。複雑なビジネス課題や技術的な問題を解決している。ますますわれわれはオープンソースをより良い未来への道筋であると考えている。
これは、われわれがApache Software FoundationとLinux Technology Centerに1998年に参加して以来、IBMが10億ドル以上をコミュニティーなどのエコシステムに投資してきた理由である。現在では、6万5000人以上の公認オープンソースエンジニアがその成長に貢献している。最近数年は、Hyperledger Projectを立ち上げるためのわれわれのLinux Foundationとの協業が、ブロックチェーン技術の発展につながっている。
先月、われわれはCall for Codeという取り組みを発表した。自然災害の救援に向けてクラウド、データ、人工知能(AI)、ブロックチェーンを活用するためのイニシアティブだ。3000万ドルを5年にわたり投資し、社会問題の解決に向けてデベロッパーが結束し、Linux Foundationと創設者David Clark Causeとのパートナーシップにより、国連人権高等弁務官事務所、赤十字社などをサポートしてきた。これについても、Linux Foudationの支援の下で実施したものだ。
こうした取り組みにより、われわれは、より多くのデベロッパーにIBMのソースコードを理解してもらいたいと考えている。
--最近のIBMのデベロッパー向けの取り組みでは、Systems of Engagement(SoE)を意識した新たな発想を求めるようなメッセージが印象に残ります。一方で、エンタープライズ領域では、基幹系を含め、以前からあるシステムとそのモダナイズが求められる場面も多いと考えられますが、そうした層への訴求をどのように考えていますか?
もちろん、基幹系を中心とする層へのアピールも重視している。ただし、これまでと同じような方法論をデベロッパーに求めるというわけではない。われわれは、WebSphereやDB2、MQといったソフトウェアをコンテナ化する動きに注力している。
これにより、最新のSoE的なアプリケーションと、レガシーシステムが、コンテナという同一のプラットフォームの載ることになる。そうなれば、レガシーシステムを担当するエンジニアとそのほかのエンジニアが前提と考えるインフラ環境の間に、決定的な違いがなくなってくるため、さまざまな意味におけるエンジニアの世代間ギャップを解消できる。