世界中の企業の幹部が、最高情報責任者(CIO)(とCIOが取り仕切っている技術)が2020年に企業を襲ったあらゆる困難に対処してきたことを評価している。しかし今や、上司はさらなる成果を求めている。企業役員の3分の2以上(69%)がデジタルビジネスの取り組みを加速したいと考えているが、これはIT担当役員に新たな要求が突きつけられることを意味している。
Gartnerの調査レポート「CIO Agenda」によれば、欧州のCIOのうち4分の3弱(71%)が、新型コロナウイルス対応で果たしている役割によって、CIOが事業部門から以前よりも注目されるようになったと答えている。
2019年には、取締役の3分の1(33%)がCIOと密接な人間関係は持っていないと答えていた。しかし2020年は、その割合が16%まで減少した。残る84%は、CIOとの関係性について、「パートナー」か「信頼できる味方」だと述べている。
オンラインで開催された「European IT Symposium」で米ZDNetの取材に応じたGartnerの調査担当バイスプレジデントTomas Nielsen氏は、「新型コロナウイルスから生じた事態の1つに、デジタルビジネスがCIOや取締役会の優先事項の1つになったということがある」と述べている。
「2021年のテーマはデジタルビジネスの加速になるだろう。これは、組織のほかの部門からの要求によるものだが、どうすればデジタル化の道のりを加速することができるだろうか」
その疑問への答えは、2021年に入ると、優れたCIOはIT部門に新たに集まった注目を利用して、テクノロジー主導の変革を推し進めるというものだ。このような全面的なデジタル化に対する需要の高まりは、Gartnerが2021年にIT予算が増加すると予想している理由の一端を説明できるだろう。
EMEA(欧州、中東、アフリカ)地域の2021年のIT支出は1兆7500億ドルに達すると予測されているが、これは前年比で2.8%の増加に相当する。Gartnerによれば、業績が高い企業は、すでにデジタルイノベーション計画を加速して、新型コロナウイルス対応以外の面も強化しようとしているという。
これらの企業は、顧客との距離を縮めることができ、関係性の構築や体験の改善につながる技術に投資している。CIOの半数以上(58%)がビジネスインテリジェンスに投資しており、それに次いで支出が大きい2つの分野として、クラウド(53%)と自動化(44%)が挙がっている。
しかし、新たにITに関心が集まっているからといって喜んでばかりはいられない。企業の幹部は2020年、クラウドなどの技術が組織運営の維持に役立ち、eコマースの成長を支え、新たな事業分野への進出を可能にしたことを目の当たりにした。
取締役会は今や、デジタル技術への投資が素晴らしい結果を生み出すと理解したわけだ。彼らはGartnerの言う「デジタルビジネスの加速」を追求し、今後さらに大きな恩恵に与ることを期待しているが、これは価値の創造が重視されるようになることを意味している。
Nielsen氏は、「IT部門の役割は、バリュープロポジションに不可欠のものになりつつある。つまりCIOは、IT運用を中心としたモデルを、より価値を重視したものに変えることを求められる。もはや、要求に対応していくだけでは十分ではない。もっと積極的に関与しなければならない」と述べている。
CIOは、ITの指標やSLA(Service Level Agreement)より、売上高や収益性の向上といったビジネスの重要業績評価指標(KPI)で評価されるようになるだろう。