ITアナリストが知る日本企業の「ITの盲点」

第19回:デジタル時代に活躍できるCIOになるための条件

取材・構成=翁長潤

2022-07-21 06:00

 本連載は、元ソニーの最高情報責任者(CIO)で現在はガートナージャパンのエグゼクティブ プログラム グループ バイスプレジデント エグゼクティブパートナーを務める長谷島眞時氏が、ガートナーに在籍するアナリストとの対談を通じて日本企業のITの現状と将来への展望を解き明かしていく。

 デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進に当たり、従来のIT部門とは別に専任組織を設立する企業も多い。その結果、IT部門の存在意義や役割も変化するのは避けられない。同様にIT部門の「長」であるCIO(最高情報責任者)にも変革が迫られている。これからの時代に活躍できるCIOに求められるのは何か? 前回に引き続き、多くのCIOをサポートしてきた足立祐子氏が解説する。

これからのCIOに求められる、「組織で担うべき」役割とは?

長谷島:前回の記事では、主にIT、デジタルテクノロジー関連に従事する方、個人に関する話をしました。今回は、企業が直面しているDX推進も含む、ITマネジメントの組織的課題、さらにはそれに対してCIOがすべきことについて伺いたいと思います。足立さんが普段接しているCIOの皆さんが抱えている共通性の高いテーマだと思いますが、この課題をどのように捉えていますか。

足立氏:昨今は、DXに取り組む中で、企業によってはIT部門ではなくDX推進の専門部隊を設立する動きが見られます。こうしたIT部門以外でテクノロジーに携わる従業員が登場したことにより、IT部門の在り方そのものが問われる時代になってきました。また、今後はどう活動していくべきか、時代や組織の変化にどう対応していくべきかを考えなければいけない時期を迎えていると思います。

 私は、主に人材育成やリーダーシップ、デジタルによるイノベーション、トランスフォーメーションに向けた組織文化の変革に関する動向分析や提言など、CIO向けリサーチを担当しています。CIOをサポートする業務を通して感じていることは、多くのCIOご自身が何をしなければならないかについて、深く考えているということです。

 IT部門の立ち位置としては、これまでと同様にビジネス活動を支えるソリューションを提供する「縁の下の力持ち」として居続けるのか、または「デジタルビジネスを先導する存在」になるのかという選択に直面しています。

 前者であれば、例えば、既存の役割である、IT部門にしかできないようなシステムのアーキテクチャーやセキュリティなど基盤の構築・運用に関することです。また、後者であれば、ほかのビジネス部門でデジタルテクノロジーを駆使する「ビジネステクノロジスト」と連携して、デジタルビジネスのけん引役を新たに担う世界観ですね。

 そうなると、CIOには、単にIT部門の面倒を見るだけではなく、企業全体のより大きな組織構造や情報の在り方、それらに加えて、アーキテクチャーの設計からどういう人材をどのように配置するかを指揮するなど、より多くの役割を果たすことが求められるようになります。その結果、既に多くのCIOにとって、IT部門の存在意義、役割などが大きく変化している状況にあると思います。

長谷島:かつて企業内のITの活用は、その大半がIT部門を介して、なされてきました。足立さんがおっしゃるように、企業全体のITを担う体制を「IT組織」と捉えると、そこにおけるIT部門の役割は相対的に小さくなる傾向がありますね。ただ、「IT組織」を統括できる存在という観点では、CIO以外に担える人はいないのではないか、と考えているのですが、いかがでしょうか。

足立:はい、ポイントはそこです。CIOがやらなければ、誰がやるんだということですよね。

足立祐子氏
ガートナージャパン リサーチ&アドバイザリ部門 ディスティングイッシュト バイス プレジデント アナリスト
CIO向けリサーチを担当。主に人材育成、リーダーシップ、デジタル・イノベーションとトランスフォーメーションに向けた組織文化変革に関する動向の分析や提言をしている。

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