ITアナリストが知る日本企業の「ITの盲点」

第17回:コロナ過で判明したリモートワークの功罪--恒久化へのアドバイス

取材・構成=翁長潤

2022-02-04 06:00

 本連載は、元ソニーの最高情報責任者(CIO)で現在はガートナー ジャパンのエグゼクティブ プログラム グループ バイスプレジデント エグゼクティブパートナーを務める長谷島眞時氏が、ガートナーに在籍するアナリストとの対談を通じて日本企業のITの現状と将来への展望を解き明かしていく。

 今回のテーマは、リモートワークの普及で変容した「働き方」だ。コロナ過により従業員の働く環境が激変する中、ウェブ会議などのツールを活用する従業員の業務効率や生産性、意識はどう移り変わっているのか。リモートワークの恒久化を見据えた今後の業務環境の在り方について志賀嘉津士氏に聞いた。

30年以上も日本のIT市場のイノベーションを見てきた

長谷島:初めにガートナーに入るまでの経緯を聞かせてください。

志賀:「物書きをしたい」と考え業界紙を発行する新聞社に入社しました。当時は「IT」ではなく「オフィスオートメーション(OA)」という言葉が出始めた時代でした。その分野の取材担当になったのが、IT領域に携わるきっかけです。その後、ガートナーと統合する前のデータクエストでPCなど当時の新しいテクノロジーが出始めた時期の市場調査を担当し、そこから非常に長い年月が経ちました。

長谷島:どれくらい前ですか。

志賀:「Windows 95」の登場以前ですから30年以上経ちます。それ以前の国内のPC市場は、NECの「PC-9800」が席巻して外国製品が入る余地がありませんでしたが、「DOS/V」の登場で国際的に互換性の取れる標準的なOSを搭載したPCを外国勢が投入し、市場が激変するという歴史を見てきました。

長谷島:メインフレームのように、コンピューターが非常に高価で企業内でも特定用途で使われていた時代から、個人がプライベートでも使えるようになった時代まで見てきたのですね。

志賀:はい。まさに「ダウンサイジング」という言葉の登場で、コンピューターの“民主化”が進み、「一人一台」の時代になりました。PCの普及により、今まで電卓で3日ほどかけていた業務が表計算ソフトを使うとわずか5分で解決できるなど、圧倒的に仕事の効率が上がるようなものすごいイノベーションが起きました。

長谷島:テクノロジーが仕事の仕方や世の中を劇的に変えていく様子を30年以上も続け見続けてきたわけですね。では現在、ガートナーではどのような領域を担当していますか。

志賀:特に人との接点が近く業務現場のユーザーが利用するITの領域を担当しています。例えば、グループウェアやメール、最近では「Microsoft 365」「Google Workspace」なども含まれます。

志賀嘉津士氏
ガートナー ジャパン リサーチ&アドバイザリ部門 ソーシャル・ソフトウェア&コラボレーション担当 バイス プレジデント アナリスト
情報システム/PC関連編集者、記者職を経て現職。データクエスト ジャパン(現ガートナージャパン)入社後はPC産業/市場関連動向や、個人/企業内個人のIT需要調査分析を担当。現在は企業向けアプリケーション・ソフトウェア分野で、電子メール、グループウェア、SNSなどのコラボレーション領域や、インターネット活用による新たなワークスタイルの変革など、情報活用領域全般をウォッチしている。

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