業界標準への準拠とPeopleSoft統合のジレンマで苦しむEllison氏

山下竜大(編集部)

2005-09-22 23:20

 米Oracleがサンフランシスコで開催しているユーザーカンファレンス「Oracle OpenWorld San Francisco 2005」(OOW 2005)3日目の9月21日、“Grid Day”の基調講演に米Oracle CEO(最高経営責任者)であるLarry Ellison氏が登場し、オラクルの今後24カ月について語った。

 中でも最も興味深かった話は、「Oracle Fusion Middleware(OFM)で、IBM DB2やMicrosoft SQL Serverなどのデータベース製品をサポートするかどうかを考えているところだ」というEllison氏の一言だった。

米オラクルのラリー・エリソン氏
米Oracle CEOのLarry Ellison氏

 OOW 2005でOracleは、OFMでIBMのアプリケーションサーバ製品である「IBM WebSphere」をサポートすることを発表しているが、データベースのサポートは言及していなかった。これまでデータベースの分野だけは絶対に譲歩しなかったEllison氏を、苦悩させている理由の1つが“業界標準”への準拠とPeopleSoft製品の統合だ。

 業界標準は、Oracleにとって重要な分野の1つであり、業界標準に基づいてアプリケーションを構築することで、ほかの業界標準に基づいたアプリケーションと相互運用性を確立できる。

 また、ミドルウェア製品を業界標準に準拠することで、さまざまなコンポーネントを“Hot-Pluggable”にすることが可能。これにより今回のOOW 2005では、OFMでIBM WebSphereやオープンソースのJBossなどをサポートすることを発表した。OFMは、アプリケーション開発に必要なすべてのコンポーネントを業界標準に基づいてスイート製品として提供されるOracleのミドルウェア製品群だ。

 今回のOOW 2005で、最も重要なテーマを1つだけ挙げろと言われれば、それはOFMであり、Hot-Pluggableなコンポーネントの実現だ。Oracleのミドルウェア製品群は、JavaやJavaに関連するインターネット標準に基づいて開発されている。

 Ellison氏は、「業界標準の準拠は、Oracleの歴史そのものだ。Oracleは、25年前に最初の商用リレーショナルデータベース(RDB)を開発したのだが、これはSQL言語という業界標準に基づいていた。当時の競争相手は、プロプラエタリな言語を使ってデータベースを提供する会社だった」と振り返る。

 「競争相手の1つとして、カリフォルニア大学バークレー校で開発されたIngresというデータベースがあったが、これにはQUEL言語が使われていた。QUEL言語は、優れた問い合わせ言語だが業界標準ではなかった。いまではRDBと言えば、SQL言語に基づくものが主流であることから、業界標準に基づくことは顧客の投資を保護することにつながる」(Ellison氏)

 現在、Oracleでは、PeopleSoftの買収に伴い、両社のアプリケーション製品を統合する「Project Fusion」と呼ばれる取り組みを展開している。このProject Fusionは、OFMをベースにコンポーネント化されたアプリケーションを組み込むことで、ビジネスの変化に俊敏に対応できるアプリケーション環境を実現できる。

 「Project Fusionにより、顧客は、価格や性能、セキュリティなどの条件に基づいて行ってきた、これまでの意思決定をムダにすることなく、これまで以上に自由な選択が可能になる。Oracleでは、今後もすべての製品を業界標準に基づいて提供していくことを約束する」とEllison氏。

 この約束を守るために、現在最も重要となる業界標準がSOA(サービス指向アーキテクチャ)だ。SOAを利用することで、システム構築における既存の投資を保護しすることが可能。SOA対応のシステムを構築することで、Oracle以外のシステムからOracleのシステムを呼び出すことも、Oracleのシステムから非Oracleシステムを呼び出すことも可能になる。

 「われわれがOFMで、IBMのコンポーネントを認定することに驚いた顧客は多いのではないだろうか……。もちろん、Oracle製品を選んでもらえれば、それは大変に嬉しいことだ。しかし、顧客の投資を保護するためにはIBMのコンポーネントを認定することが顧客にとって必要なことだと判断した」(Ellison氏)

 今回、OFMでIBM WebSphereなどのアプリケーションサーバ製品をサポートすることが発表されたが、PeopleSoft製品やJD Edwards製品を使用している顧客が次にIBM DB2やMicrosoft SQL Serverなどのデータベース製品のサポートを要求してくることは容易に考えられる。

「今後、決定を下さなければならないは、Oracleデータベース以外のデータベース製品をOFMでサポートするかどうかということだ」とEllison氏。

 すでにアプリケーション製品では、IBM DB2をサポートすることを発表したものもあるが、「OFMについては、今後PeopleSoftのユーザーなどとも話し合いながら意思決定を行っていく計画」とEllison氏は話す。

 「PeopleSoftやJD Edwardsのユーザーがなぜ、IBM DB2やMicrosoft SQL Serverを選択したのかじっくりと話を聞き、顧客にとって最適な決定をしたい。現状では(サポートするかどうかの確率は)半々というところだ」(Ellison氏)

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さすが人気物のEllison氏。会場は来場者で埋め尽くされた

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