Project Fusionへの道をユーザーに訴えたオラクルのWookey氏

山下竜大(編集部)

2005-09-22 00:06

 米Oracleがサンフランシスコで開催しているユーザーカンファレンス「Oracle OpenWorld San Francisco 2005」(OOW 2005)2日目の9月20日、“Application Day”の基調講演に米Oracleのアプリケーション担当シニアバイスプレジデント、John Wookey氏が登場し、Project Fusionに向けたOracleの取り組みについて紹介した。

 Wookey氏はまず、OOW 2005に参加した5000名以上のPeopleSoftユーザー、2万7000名以上のOracle EBSユーザー、1000名以上のJD Edwardsユーザーおよび近隣ホテルで開催されているRetekのカンファレンスに参加している400名以上のユーザーに感謝の意を表した。

 昨日の基調講演に登場したOracleのCharles Phillips社長もそうだったが、今回のカンファレンスでは、買収した企業のユーザーに対し非常に気を使っていることが印象的だ。

米Oracle PresidentのCharles Phillips氏

 Wookey氏は、「アプリケーションのビジネスは非常にシンプル。顧客の成功を考えることが重要だ。顧客のビジネスをよく理解すれば、素晴らしいアプリケーション製品を実現することができる。Oracleでは、長い間そのことだけを考えてきた。これは、PeopleSoftの開発者も同様だろう」と話す。

 OracleとPeoplespftの統合で、重要なのはOracle、PeopleSoftのそれぞれのユーザーコミュニティを1つに統合することだ。そのためにOracleの経営陣は、世界各地のユーザーコミュニティを訪問し、説明会を開催している。

 その中で、多くのPeopleSoftユーザーからなされるのが、以下の3つの質問だという。

「今後もサポートを提供してもらえるのか?」

「現在の投資に対し付加価値が期待できるのか?」

「将来は大丈夫なのか?」

 「“PeopleSoft製品を買っていますが、Oracle製品は買っていません。それでもサポートはしてもらえますか?”とよく聞かれる。これは当然の質問だ」とWookey氏。

「Oracleでは、もちろん今後のサポートも続けていくし、将来的なロードマップにより付加価値を生み出していく。3つの質問すべての答えは“Yes!”だ。すでに7月より、Oracle全社を挙げて取り組んでいる。投資を“Protect”(保護)し、価値を“Extend”(拡張)し、次世代へと“Evolve”(進化)させていくことが、Oracleのコミットメントだ」(Wookey氏)

 Oracleにとって、アプリケーション製品を次世代へと進化させていくことは最も重要な取り組みの1つだ。Wookey氏は、「Oracleは、テクノロジーカンパニーと思われていることが多いが、単に技術の研究開発を行っているだけでなく、いかに最適に顧客を次世代に進化させることができるかということを常に考えている」と言う。

「単に次世代の製品を提供するのではなく、まず顧客への効果を考える。進化により、ビジネス上のリーダーになってもらうことができることが重要だ。もちろん、その技術が単に新しいだけでなく、実用的でなければならない。新しい技術が必ずビジネスの価値になるわけでないことをわれわれは理解している」(Wookey氏)

 OracleとPeopleSoft製品の統合ロードマップでは、2005年中に「PeopleSoft Enterprise 8.9」を、2006年中に「Oracle E-Business Suite 12」「PeopleSoft Enterprise 9」「JD Edwards EnterpriseOne 8.12」をリリースし、その後「Project Fusion」へと統合されていくことがすでに発表されてる。

 Project Fusionは、業界標準に基づきモジュール化された機能を組み合わせることで、展開の柔軟性、最適性能、保守の容易性を確保できる情報指向の新しいアプリケーション。Oracle、PeopleSoft、JD Edwards製品の優れた機能を統合することで、業務プロセスの自動化、業界に特化した各種機能、より優れた操作性、リアルタイムの情報アクセスと帳票作成および共有データモデルを実現する。

 「こうした効果を基調講演で、Charles(Phillips、Oracle共同社長)が“Fusion効果”と呼んでいたが、Project Fusionにより、ビジネスに対する洞察力と俊敏性を実現できる」とWookey氏。

 同氏は、「Project Fusionは、PeopleSoftの買収により決まった方向性ではない。Oracleのアプリケーション製品の方向性として前から計画されていたものだ。PeopleSoftでも同様の計画を進めており、2社の合併により相乗効果を発揮できると考えた」と話している。

 Project Fusionの基盤となっているのは、ミドルウェア製品の進化であり、Oracle Fusion Architecture(OFA)が重要になる。OFAに基づくことで、アプリケーションの形も進化する。「次の世代のアプリケーションはコンポーネントベースであり、このコンポーネントは標準技術に準拠していなければならない」とWookey氏。

 「これまで、Oracleにしても、PeopleSoftにしても、ツールは独自の技術で開発されていた。そのため将来に対し効果的ではなかった。子どもたちが学校で学ぶべき技術ではなかったわけだ。そこで、JavaやXMLのような標準ベースのテクノロジーが不可欠だと考えた。開発、運用、管理など、あらゆる側面で標準ベースであることが重要なのだ」(Wookey氏)

 Fusion Data HubとトランザクションベースのProject Fusionのコンポーネントの第一弾は2006年にリリース予定。2007年にはProject Fusionの初期アプリケーションがリリースされ、同スイート製品が2008年に提供される計画だ。

 Wookey氏は、「将来にむけ、すでに評価を始めて大丈夫なロードマップを提供している。あとは、いつ必要なのか、いつ移行すればいいのかを適切に判断することが重要だ」と話している。

Oracle Fusion Architectureは、Oracleの次なる技術革新となる。

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