かつてのIBMならば、こんな大胆なことはしなかった。
というのも、日本IBMが競合他社の名前を明確に挙げ、しかも、それを施策のロゴマークのなかにまで盛り込んだのだ。
日本IBMは、IBM Migration Factoryを核としたマイグレーション施策を展開。「2010年はIBMへ、イ・コ・ウ!」をキャッチフレーズに、ヒューレット・パッカードやサン・マイクロシステムズなどのサーバ、EMCなどのストレージ、オラクルやSAPなどのソフトウェアから、IBMのサーバ、ストレージ、ソフトウェアへのシステム移行提案を促進していく考えを打ち出している(関連記事:日本IBM、5000超のプロジェクト実績を結集した「Migration Factory」でシステム移行ビジネスを加速)。
このキャッチフレーズと一緒に、社内向けに使用するIBM Migration Factoryのロゴマークには、「FUJITSU」「Sun」「HP」「NEC」の文字を配し、そこからIBM Migration Factoryを通じて、IBMに移行するという様子を示しているのだ。
2009年にこのロゴマークが公開された時点では、「お客様の他社製システム。来年もそのままでいいんですか?」という言葉が付け加えられていたものもあった。
これまでは、「他社のことに関してはなんら言及できません」「他社と比較するコメントは差し控えます」と繰り返し語っていた日本IBMが、ロゴマークのなかに自ら他社の名前を入れたのだから驚きだ。
しかも、「HITACHI」「DELL」といった名前がないところに、IBMが具体的なターゲットとしているベンダーが明白な点も興味深い。
IBM Migration Factoryは、IBMが持つシステム移行に関する25年間のノウハウ、過去5年間に5000以上の移行プロジェクトを手がけることによって実証された経験をもとに、サードパーティー製品を含む30種類以上のツールやガイド、メソドロジーによって、ユーザーのシステム移行を支援するものだ。
すでに日本においても、24社のユーザー企業がIBM Migration Factoryを活用しており、Japan Migration Factory Programに関しては、毎月40件以上の問い合わせがあるという。
日本IBM、移行総合技術センターのセンター長である沓掛正毅氏は、あえて他社の名前をロゴマークに盛り込んだ理由について、「顧客からの問い合わせが増加するのに伴い、日本IBMが取り組む方向性をもっと具体的に伝えたいという狙いから、このロゴマークを採用した。これまでの多くの経験を生かして、他社製品からのマイグレーションを提案していく」と語る。
いまのところ、IBM Migration Factoryに関するカタログやサイトなどには、このロゴマークは使用しない考えで、社内用の資料やイベントなどで使っていく考えだという。
これまでは「御法度」とされていた他社の名前を、ロゴマークのなかに明確に示すあたり、2010年においてマイグレーションにかける日本IBMの本気ぶりが感じられる。