今回と次回はガートナーのエグゼクティブ プログラム(EXP)グループ バイスプレジデントのJosé Ruggero氏に伺った。ガートナー ジャパン EXPエグゼクティブ パートナーの小西一有氏にも加わってもらい、日本のCIOの課題についても伺った。
ガバナンスは“話し合いの仕組み”
――ガートナーが毎年行っている世界の最高情報責任者(CIO)に対する定点調査などから、CIOが抱える課題における最近の変化をどのように見ておられますか。
Ruggero 3月に発表した2010年の調査結果を見ると、2009年から引き続いて企業コストの削減がCIOにも重くのしかかっていることがわかります。これは取りも直さず、昨今の経済情勢の激変が大きく影響しているわけですが、企業コスト全体が削減されれば、IT予算も影響を受けないわけにはいきません。
その結果、世界のCIOが調査で回答したIT予算の増減は、2009年で前年対比8.1%減少しました。ただ、2010年は企業コスト削減の流れは変わらないものの、IT予算は2009年に比べて1.3%増に転じるだろうとの集計結果が出ています。とはいえ、IT予算の規模そのものとしては2009年の落ち込みが大きかったことから、今も2005年の水準にとどまっていることを認識しておかなければなりません。
――そうした状況だと、CIOとしてはなかなか新しいことに取り組めないですね。
Ruggero 新しいことに取り組むというより、限られたリソースの中で何を優先して取り組むかという優先順位付けにも変化が起こっているようです。その優先順位を決めるポイントになっているのは、企業全体の“ガバナンス”の観点から、ビジネスやマネジメント面でいかに効果が大きいか、という点です。
小西 今、ガバナンスという言葉が出ましたが、ここで言うガバナンスは、日本で受け止められているような規則や命令に従うといった意味とはまったく違います。たとえば、ビジネス面で何を優先したいのかを経営層も事業部門もIT部門も一緒になって話し合って決めていきましょうということです。その“話し合いの仕組み”をガバナンスと、ガートナーでは定義付けています。
――ガバナンスというと、日本では統制あるいは統治という意味で受け止められていますが、話し合いの仕組みという解釈は世界の共通認識なのですか。
小西 世界の企業の多くはそう認識していると思います。ただし、命令にせよ話し合いにせよ、最適な解を見出すという目的は同じです。異なるのはアプローチでありプロセスです。こうしたガバナンスのあり方が、CIOの取り組みにおける優先順位付けでも、非常に大事になってきているということなのです。