(第1回「CIOは“攻め”のコスト最適化を目指せ」はこちらです)
“思いやりサービス”を標準化しよう
――日本ならではの最高情報責任者(CIO)のあるべき姿については、どのようにお考えですか。
日高 まず、日本の良さ、日本人に共通する心を紐解く必要があります。私は「和」の心、すなわち「思いやり」の気持ちが日本人の一番の良さだと思っています。「こうしてあげたら、もっと喜んでもらえるだろう」ということを、誰かに言われなくても自ら考えて実行する。そういう思いが、たとえば製品やサービスの品質の高さや使い勝手の良さに表れているのだと考えています。
こうした日本の良さは、企業のIT化への取り組みでも見て取ることができます。たとえばERP(統合基幹業務システム)パッケージを導入する場合、欧米の企業はその標準機能に業務を合わせようとしますが、日本の企業は追加機能をカスタマイズするケースが多いですよね。そのために導入がなかなかうまく進まないこともありますが、一方で日本の企業が求めている追加機能をよく見てみると、エンドユーザーに対する「思いやりサービス」とも言える機能が多いんですね。この思いやりサービスを生かしたIT化を進めてほしいというのが、日本のCIOに向けた私の思いです。
どういうことかと言うと、エンドユーザーが喜ぶサービスであるならば、日本の企業のみならず、世界の企業にも求められるはずだからです。そうすると、日本の企業がこれからグローバルにビジネスを広げていく際、それが大きな強みになるはずです。これはベンダーにも同様のことが言えますが、日本のCIOには、ぜひそうした認識を持っていただきたいと思います。
――しかし、カスタマイズが増えれば、コストがかさみます。コスト最適化という点では、必ずしも日本の強みにならないのでは。
日高 これまでのカスタマイズ手法だと、その通りです。そこで大事なのは、思いやりサービスを標準化するという発想です。できるだけ標準化して合理性を追求すれば、世界でも通用する日本ならではのサービスになると、私は確信しています。
ただ、思いやりサービスを標準化するためには、日本人独特の仕事に対する価値観を持ち込まないようにする必要があります。その価値観とは、「役割=人生」、すなわち「仕事=人生」という考え方です。この価値観に基づいた思いやりサービスには、どうしても属人的なプロセスが残ります。それをできるだけ省いて標準化し、コスト最適化を図る。そしてグローバルなビジネス展開に通用する、さらには優位性のあるIT化を推進する。これが日本のCIOのあるべき姿だと、私は考えています。