日本の“良さ”をITに反映させてグローバル化に挑め - (page 2)

聞き手・文=松岡功

2009-10-15 16:30

日本型のグローバルガバナンスへ向けて

――思いやりサービスを武器にグローバルに打って出よ、ということですね。

日高 そうです。なぜ、グローバル展開を強調するかというと、私どもの今回の調査で、日本のCIOが「競争のグローバル化」に強い関心を示しているという結果が出ているからです。

 その調査とは、昨今の経済情勢が自社に及ぼす影響について世界と日本のCIOに聞いたものですが、その回答の上位3つをみると、興味深い両者の違いが浮き彫りになりました。両者とも「成長の鈍化」と「物価および人件費の高騰」という2つを挙げているのは同じですが、もう1つに世界のCIOが「政府による規制」を挙げているのに対し、日本のCIOは「競争のグローバル化」を挙げているのです。

図 図:日本と欧米では経済動向の捉え方にどのような差があるのか(出典:ガートナー)
※画像をクリックすると拡大画像が別ウィンドウで開きます

 この調査結果から読み取れるのは、まず世界のCIOにとってグローバル化は、もはや当たり前の感覚なのだろうと。それに対して日本のCIOは、ここにきていよいよグローバル化を強く意識し始めた。遅まきながらと感じる方もおられるかもしれませんが、私はこれは日本のCIOのアグレッシブな姿勢だととらえています。

 ならば、ぜひとも思いやりサービスに象徴される日本の良さを前面に押し出して勝負してほしいと。それが、ひいては日本型のグローバルガバナンスにつながっていくと考えています。

日高信彦氏

――グローバルガバナンスを実践している日本の企業は、すでにあるのでしょうか。

日高 もちろん、いくつもあります。それを公表して見事に展開しておられる代表的な例で言うと、パナソニックにおける家電製品などの世界同時発売が挙げられるでしょう。世界同時発売の最大のメリットは、どこの国でも時間差なくビジネス機会を最大限生かせるということです。それが企業全体として、利益の最大化につながるわけです。

 しかし、世界同時発売を実現した裏では、あらゆる業務のプロセスを抜本的に改善したり、理想のサプライチェーンに向けた壮絶なチャレンジがあったと聞きます。その仕組み作りの陣頭指揮に立ったのはまさしくCIOであり、それを成功に導いたのは大方針を掲げたCEO(最高経営責任者)とCIOのリーダーシップでした。同社のように、世界の舞台で腕を振るう日本のCIOが、これからどんどん増えてくることを期待したいですね。


日高信彦(HIDAKA Nobuhiko)

ガートナー ジャパン代表取締役社長。
1976年東京外語大外国語部卒業後、日本アイ・ビー・エム入社。27年にわたり同社のビジネス・ソリューション事業で数多くの業績を残す。1996年、アプリケーション・システム開発部長。1999年、CRM社内ベンチャー・コアポイントのアジア・パシフィック担当ジェネラルマネジャー。2001年、アジア・パシフィックCRM/BIソリューション統括。2002年、eビジネス・ソリューションズ CRMソリューションズ参与。
2003年4月、ガートナー ジャパン株式会社代表取締役社長に就任。
テクノロジのトレンド、マーケットのトレンド、他のユーザーがどのようにITを使いこなしているのかという3つの情報を正確に、満遍なく収集し、同時に、ガートナーに蓄積されたグローバルな情報をベースに、迅速かつ的確なアドバイスで日本企業の経営戦略策定をサポートしていくことを掲げている。
ガートナー ジャパンでは、2009年11月11日〜13日に「Balancing Cost, Risk and Growth―ITで挑む、視界ゼロ時代の競争と成長―」をテーマに「Gartner Symposium/ITxpo 2009」を開催する。
Gartner Symposium/ITxpoは、ガートナーが毎年、企業のCEOおよびCIOをはじめとするITリーダー向けにリサーチの集大成を発表している世界最大級の戦略的ITイベント。本シンポジウムでは、CIO向けの提言を含め、さまざまな角度からITでビジネスの競争と成長に挑むための具体的指針・施策・展望を提言する。

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