従業員のデジタル体験(DEX)の向上が企業の成長を決める
2020年から3年間のCOVID-19流行により、多くの企業が在宅勤務へと移行した。それに対応して、IT部門は従業員が自宅で仕事ができるように、アプリケーションのクラウド移行やMicrosoft 365、Zoom、TeamsなどのSaaSアプリケーションの導入を加速した。その結果、現在、従業員は自宅とオフィスを必要に応じて使い分けるハイブリッド型ワークスタイルで仕事をするようになった。その中で、経営層が意識しているのは従業員が高い生産性で仕事をし、能力を向上させることができるかどうかである。
VMware.Inc
アジアパシフィック
および日本地域(APJ)
エクスペリエンス
ソリューション セールス責任者
プラティープ・ヴィナヤガモールティ氏
図1.DEXはハイブリッド型組織を円滑に動かす鼓動
COVID-19流行への対応もあり、従業員には一定のアプリケーションやデバイスが提供されているが、ヴイエムウェアはそれに加えて、測定、分析、修正の機能を提供する。
今、多くの企業で従業員は直接届けられたデバイスを受け取り、数分以内で仕事を始めることができる環境にはない。それに対して、ヴイエムウェアはデバイスに実装された「VMware Workspace ONE Intelligent Hub」でWindows、Mac、Android、iOSに対応、あらゆるデバイスからすべてのアプリケーションとリソースへのセキュアで、確実、一貫したアクセスを実現する(図2)。「入社したばかりの社員がデバイスのIntelligent Hubを開くと、すべてのアプリケーションを見ることができます。SaaSもネイティブなアプリケーションもシングルサインオンで、パスワードなしにログインでき、『お気に入り』に入れることができます。トレーニング用ビデオも視聴でき、セルフサービスなので、自分でチケットを発行できるようになっています」(プラティープ氏)。
図2.最高の従業員体験を提供するVMware Workspace ONE Intelligent Hub
デバイスやアプリケーションの状況を可視化し、課題を解決するDEXソリューション
従業員が仕事をする中で、デバイスが生産性と顧客体験に及ぼす影響は起動/シャットダウンの待機時間、アプリケーションのクラッシュとハングアップ、重要なアプリケーションのエラー、キオスク端末や共有デバイスのクラッシュ/障害が考えられる。DEXソリューションはデバイスやアプリケーションの状態を可視化し、これらの問題解決を支援する。
次にDEXソリューションで、デバイス運用の課題を解決した2社の例を見ていくことにする。まず全米に多数の店舗を持ち、10万台のモバイルデバイスを利用している小売業A社である。同社では毎年10%ものデバイスが紛失や盗難されるため、数百万ドルの損失が発生していた。また従業員は毎朝出勤して、デバイスを持ち出して仕事をしようとすると、よくバッテリー切れが起こっていた。そのため、高価なデバイスを予備機として多数用意しなければならず、余計なコストが発生していた。さらに、利用している内製のアプリケーションがクラッシュしても原因がわからなかった。IT部門から離れた店舗も多いため、デバイスが故障した場合にはIT部門まで送る必要があり、修理に時間がかかっていた。
これらの課題を解決するために、A社ではVMwareのDEXソリューションを導入、ダッシュボードでデバイスを見える化した。その結果、デバイスを最後に利用した従業員まで特定できるので、返却の有無や充電器への設置状況まで把握できるようになった。そして、バッテリー容量の低下や故障を起こしそうなデバイスも事前に把握することができる。交換が必要な場合は自動的に注文する仕組みになっており、予備機の確保の必要もなくなった。そのためのワークフローは、あらゆるITタスクの設計とオーケストレーションを可能にするヴイエムウェアのITモダナイゼーションプラットフォーム「Freestyle Orchestrator」でロジックを定義し、簡単に作ることができる。これによって、バッテリー容量低下を検知、ServiceNowなどのサードパーティツールで、チケットの自動発行や管理者への通知が可能になった。「管理者はデバイスをリモートでリアルタイムに制御して、『VMware Workspace ONE Assist』で、迅速にデバイス、ネットワーク、アプリケーションのトラブルシューティングと修理を行います。その結果、A社ではデバイスとアプリケーションのライフサイクル全体にわたる従業員体験を向上させることができました」(プラティープ氏)。
機械学習を活用、原因を迅速に特定、修正し、サポートを効率化
もう1社がシステムクラッシュに悩まされていた製造業B社である。同社ではデバイスのクラッシュが多く、ブルースクリーン(BSOD)関連のヘルプデスクチケットが多数発行されるものの、原因が不明で、デバイス、アプリケーション、ネットワークの各担当でたらい回しになっていた。問題解決に至らないことから、ユーザーはあきらめてしまい、クラッシュを報告しなくなり、その結果、IT部門の評判が低下する状態が生まれていた。そこでB社はDEXソリューションを導入し、クラッシュの原因を可視化した。
クラッシュが多数発生すると、DEXソリューションがデータにもとづくインサイトと相関関係を示すことで問題を早期に発見、IT部門に通知する。そして、機械学習(AI)モデルを活用して、クラッシュの根本原因の特定と素早い修正を行い、サポートリソースの利用を効率化している(図3)。
図3.機械学習で原因の迅速な特定と修正を行い、サポートを効率化
DEXソリューションは、ユーザー満足度が低い場合の対応も可能だ。エクスペリエンスの測定と分析を行い、デバイスのOSバージョン、メモリ、ディスク残量などの詳細なスペックを一元的に提供する。これによって、例えば、システムクラッシュが発生した際、どのアプリケーションがメモリを大量に消費していたか、という時系列な状況の可視化が可能になる。DEXソリューションはMicrosoft Intuneなどサードパーティ製品が管理するWindowsデバイスだけでなく、仮想デスクトップ環境「VMware Horizon」でもエクスペリンスの測定と分析を行うことが可能だ。
社内でフル活用、社員が嬉しくなるようなIT体験の提供を目指す
ヴイエムウェア株式会社 Colleague Support Lead
石井 純也氏
VMware ITの運用原則は、従業員体験の向上とリソースの最適化、そして、セキュリティとコンプライアンスの強化だ。その実現のために、従業員やデバイスから収集したデータの洞察にもとづいて、様々な機能を自動化、効果の測定・検証を実施している。例えばラップトップPCのバッテリーが消耗した場合にはWorkspace ONE Intelligenceがレポート、バッテリー交換のサービスチケットを自動的に起票、社内 ITチームがベンダーと交換の手配・調整を行う。こうしたDEXマネジメント施策の結果、施策導入からの期間が経過するほど、サービスチケット平均解決時間(MTTR)が短縮された。「一般には、導入直後の効果が最も大きく、次第に小さくなっていきます。ところがDEX施策導入1カ月後のMTTRは124分だったのが、2カ月後115分、3カ月後81分になりました。収集される情報の増加に伴って精度が上がり、先回りしたサポートができるようになり、効果が上がっています。ヴィエムウエアではその他にも複数の施策も展開、DEXのさらなる向上を目指しています」(石井氏)。
このようにして、ヴイエムウェアは、DEXソリューションで自己修復型ワークスペースを実現し、従業員に最高のデジタル体験を提供する。