外国人上司と日本人上司、こんなに違う7つの選択 - (page 2)

富永恭子 (ロビンソン)

2011-10-24 11:30

3. 計画変更は「あり」それとも「なし」?

 ソフトウェア開発のプロジェクトは、ハードウェアを作るプロジェクトに比べると、ある意味で生産性がよくない。

 たとえば、旋盤でネジを作る作業ならば、設計図と生産数に応じて、かかる時間や必要な人員数など、だいたいのコストを見積もることができる。しかし、ソフトウェア開発は、実際にどのぐらいの時間と人数が必要かを予測するのはとても難しい。

 そこで外国人上司は、仕事を引き受けたとたん、本流の「プランA」のほかに「プランB」や「プランC」など、いくつかのバックアッププランを用意する。「プランA」でトラブルが発生すると、すぐさまプロジェクトは「プランB」に切り替えられる。それでもダメな場合は、さらに「プランC」がプロジェクトを引き継ぐという仕組みだ。それらのバックアッププランに対する費用は、予算の段階から見積もりに計上されており、上司のさらに上司も当然のごとくそれを許可する。

 一方、日本人上司はたいていの場合、バックアッププランを立てない。それに、計画にバックアッププランを盛り込むことは、プロジェクトが失敗する可能性を前提に考えているようにみられるため、評価にも影響する。たとえバックアッププランを用意したいと思っても、上司の上司も同じ考えなので、なかなか許可してくれない。

 途中でもっといいアイディアを思いついたとしても、計画を変更することはできない。日本では、途中で計画を変更すると、計画だけでなくプロジェクトそのものが「間違っていた」と評価され、悪くすると責任問題にまで発展してしまうことさえあるからだ。

 バックアッププランを持たないプロジェクトは、到着地までの燃料しか持たない飛行機のようなものだ。いったん発進してしまったら、どんな障害があってもまっすぐに飛び続け、最短距離で目標に通達するしかない。

4. 「アウトプット」を見るか?「インプット」を見るか?

 開発ではないが、人事評価の事例でこんな話を聞いた。

 ある純日本企業で、日本人社長のブログを英語に翻訳する担当者が二人いた。一人は翻訳がとても上手かった。もう一人は、真面目な性格で遅刻せず出社し、残業もいとわない頑張り屋だったが、翻訳は下手だった。二人の力の差は歴然としていたから、記事を読めばどちらがそれを担当したのかはっきりわかったという。

 ところがある日、翻訳担当者の一人が突然、会社をクビになってしまった。クビになったのは、翻訳が上手い人の方だった。不思議に思い、理由を尋ねたところ「彼は翻訳の仕事を終えると自席を離れてどこかへいってしまうから」だと答えたそうだ。

 部下を評価する指標も、外国人上司と日本人上司では大きく違う。

 外国人上司は部下を「アウトプット」で評価するから、プロジェクトを成功させ、結果を出せれば、途中経過に何があってもたいていは許してくれる。たとえばゲームプログラマーなら極端な話、2週間で「いいゲーム」を思いつけば、その間、毎朝遅刻してこようが、会社を抜け出してスポーツジムで汗を流していようが、評価される。 上の例でいえば、仕事を終えると行方不明になってしまうが翻訳は上手い担当者がそうだ。

 一方、日本では、その部下がプロジェクトに対してどんな貢献をしたかが重視される。つまり、どれだけプロジェクトに「インプット」したかが評価の対象となる。だから、「いいゲーム」を思いつかなかったとしても、毎日、遅刻せずに定時に出社し、残業もしてがんばっていれば、それなりに評価される。

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