震災時の情報提供や多言語対応など、グローバルを意識した朝日新聞社のこうした取り組みをIT基盤から支えたのがAWSだった。震災のあった2011年3月ごろ、AWS上にCMSを実装し、入稿からデータ管理、ウェブページ作成にいたるまでのプロジェクトを担当したのが、システムインテグレーターの日本技芸だった。
朝日新聞社は具体的に、ロードバランサーとして「Amazon Elastic Load Balancing」と、東アジア地域以外からのアクセス対策としてCDN(コンテンツデリバリネットワーク)サービス「Amazon CloudFront」を採用。突発的な大量アクセスへの対応力とコンテンツの高速配信の仕組みを取り入れた。
中国語版、韓国語版を相次いで発表
尖閣諸島をめぐる中国との問題が持ち上がった8月には、デジタル面のPVが前日までの4.5倍に急増。担当した日本技芸はこれに対して、処理を分散させるアプローチではなく、キャパシティを上げる「“スケールアップ”の方法でピークをしのいだ」という。
日本技芸の御手洗大祐社長は、朝日新聞社とのプロジェクトについて「プロトタイピングを用いたアジャイル開発を中心に、効率的に進められている」と話す。またAWSについては「この3年でAWSの安定性やコスト優位性が急速に高まった。東京リージョンの可用性の向上により、海外にサーバを置きたくないという企業のニーズも満たせるので、提案の幅が広がる」とコメントした。
パブリッククラウドがカバーできる領域が次第に拡大する一方、利用をためらう企業もまだ多い。パブリッククラウドの活動範囲がどこまで広がるのか、信頼性などにいつかは限界が見えてくるのか、まだはっきりとは分からない。AWSの頑張りは1つの大きな指標になりそうだ。